夜空に見るは灰色の瞳
結局出てきたのはお湯割りで、不満げな顔を見せつつもそれを受け取る。
いつ以来かはもう忘れたけれど、かなり久しぶりのお酒であることは確かだ。


「乾杯でもしとくか?」


大路くんが、湯呑を掲げて見せる。
普段はお酒を飲まない私が、代わりにお茶を貰う時に使っているのと同じ湯呑だ。


「何で?」

「何でって、まあ久しぶりだしな。良いことか悪いことかは知らないが、あの叶井が酒を飲みたくなるような何かがあったみたいだし」


強いて言うなら、三永ちゃん、そして大路くんと、同じことを二度も訊かれてうんざりしたから飲みたくなったのだが、その話を蒸し返すのはやめておこう。

それに、私がどうこうと言うより、むしろ良いことがあったのは大路くんの方に見える。何だか嬉しそうだ。


「まあなんだ、この際理由なんて何だっていいだろ。こういうのはノリだノリ。ほれ」


カウンターの向こうから、湯呑を持った手が伸びてくる。
無視するのもかわいそうなので、私も同じように腕を伸ばした。
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