夜空に見るは灰色の瞳

「のわっ!!?」

「こんばんは。不思議な驚き方ですね」


大路くんの店を出て、帰り着いた自宅アパート二階の部屋の前。当然のようにそこには、既に見慣れた男の姿があった。


「……なに、して…………」

「何って、叶井さんの帰りを待っていたんですよ。それにしても今日は随分と遅いお帰りでしたね。残業でもしていました?」


人好きがするようでいて実は胡散臭い笑顔を浮かべる、灰色の瞳の男。
いつも似たような黒っぽい格好をしているが、好きなのだろうか。まあどうでもいいけれど。


「いや、残業はしてないけど。……もしかして、ずっとそこに立ってたの?」


この時間ならば、二階の他の部屋に住んでいる住人も既に帰宅していることだろう。
その人達は、私の部屋の前に立っているこの男のことをどう思っただろうか。
変な誤解が生まれていたとしたら物凄く困る。


「いえ、正直に言うと、何度か部屋の中にお邪魔しました。流石に寒かったもので。でも中に居るところに叶井さんが帰ってきたら、また不法侵入だなんだと言われるかと思って、こうして頃合いを見計らって外に」

「…………」


頃合いを見計らったところで、既に中に入ったのならそれは立派な不法侵入ではないか。
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