夜空に見るは灰色の瞳
「ああ、もうっ!勝手に」


男が揃えて脱いだ靴の脇に乱暴に靴を脱いで、廊下を進んで部屋に入る。


「不法侵入」


そしてこちらを振り返った男を睨みながらそう言えば


「お邪魔しますってちゃんと言いましたよ」


男は笑顔でそう返す。


「そういう問題じゃないってわかるでしょ!」

「まあまあ落ち着いて。興奮すると熱が上がりますよ。どうぞ、叶井さんは座っていてください。……いや、この場合は寝た方がいいですかね。まあとりあえず、薬を飲むためにはお茶がいりますよね。温かい方がいいですか?」

「淹れんでいい!」


お茶なら大路くんの所で二杯も飲んできたところだし、そうでなくともこの男にお茶を淹れてもらおうとは思わない。というかそれ以前に、風邪ではない。


「風邪ではない、でも顔が赤い……つまりは、しもやけですか?でも、今日は冷えるとは言っても、そこまでではないですよね」

「またひとの心を勝手に……」

「読んではいません、感じただけです。ちなみにその“大路くん”とは、どちら様ですか?」


答える代わりに、私は深くため息をついた。
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