夜空に見るは灰色の瞳

「それを教える必要がどこにあるの?」

「教えられないような関係なのですか?」

「そうじゃなくて、あなたに教える必要性を感じないって言ってるの!」

「“くん”を付けて呼んでいるということは、男性ですよね。かなり近しい関係の方とみましたが、もしかして彼氏さんですか?」

「…………」


どうしてこう今日は、一日に何度も彼氏の存在について問われなければならないのだろう。三永ちゃん、大路くんときてこれで三回目だ。


「……彼氏じゃないから。大路くんは一緒に働いてた元同僚。今は会社を辞めて店を開いてるから、たまに顔出しに行ってるの」


もしくは、顔を見に行っているとも言える。
かつては一緒に働いていた仲だし、大路くんとは、部署は違ったけれど同僚の中でも特に仲が良かったから。

別に、元々知り合いだったとか、共通の趣味があったとか、そういうわけではないのだが、部署を問わず社内に仲良しの多かった大路くんが積極的に話しかけてくれたので、必然的にそうなった。
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