夜空に見るは灰色の瞳
「でも叶井さんは、珍しいタイプですよね。せっかく専用の魔法使いを手に入れたのに、何もさせないどころか“帰れ”を連発しますから。そんな人、中々いないと思いますよ」

「……突然“魔法使いですよー”って現れた人にぽんぽん用事を言い付ける人の方が、少数派だと私は思うけどね」

「そうですか?まあ現代ではそうなのかもしれませんね。楽でいいとも言えますが、同時にそれは寂しいことでもありますけど」


そう言って、男は立ち上がる。


「とりあえず、今日のところはこれで帰ります。残念ながら特にして欲しいこともないようですし」


その残念な気持ちが表情にもよく表れているが、私としては帰ってくれるのはとても喜ばしいことなので、その顔に罪悪感を抱いたりはしない。

ちょっぴり名残惜しげに、それでも「お邪魔しました」とペコリと頭を下げて、男は玄関へと向かう。
靴を履いて外に出たところで、男はドアを放す直前、思い出したように振り返った。
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