夜空に見るは灰色の瞳
重たいため息を一つ。そして、しばし考える。

どうすれば私は、あの男から解放されるのだろうか。
私はいつになったら、元の平穏な生活を、あの男と出会う前の生活を取り戻すことが出来るのだろうか。

その日が訪れた暁には、もう二度と迂闊に空を見上げることはしない。絶対にだ。

では、そこに行き着くためにはどうすればいいのだろう。

うーん……と唸りながら、特に意味もなく寝室を見渡す。

気持ちのいい朝日がカーテン越しに差し込む窓を見て、その視線を壁へと動かして、それを今度は天井へ。あちこち見回しながら考える。

もちろん、その過程で妙案が浮かんだりすることはないのだが、代わりに男がよく口にする台詞が不意に頭に浮かんだ。
それは“読んではいません、感じただけです”とは別の、でもそれと同じくらいお決まりとなりつつある台詞。


――僕に、何かして欲しいことはありますか?


「……何かして欲しいこと、か」
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