夜空に見るは灰色の瞳
「それで、もういいですか?」

「っ!?ちょっと、まだいいって言ってないでしょ!」

「でもダメだとも言わなかったので。無言は肯定と取るのが一般的ですし」


鏡から、まるで3D映像のように男の顔が飛び出してくる。
最早、スッピン隠しにタオルで顔を覆っている場合ではない。というか、このタイミングでもっととんでもないことに気が付いてしまった。


「私はこれから着替えるの!いい、それ以上一ミリでもこっちにはみ出したら許さないからね!!」

「一ミリも動かないのは難しいですが、まあ善処します」


鏡から飛び出した男の顔をキッと睨み付けてから、足早に洗面所を出る。
そのまま部屋を突っ切って寝室に飛び込むと、まずは深く息を吐いた。


「……大丈夫だよね、気付かれてないよね……」


スッピンの方に気を取られてうっかり忘れていたが、今の私は男性の前に立つにはあまりに無防備な状態だった。

つまりは、まだブラジャーを着けていなかった。
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