夜空に見るは灰色の瞳
ひとの話も聞かずに両手をテーブルの上にかざした男は、呼吸を整えてからスッと目を閉じる。
薄く開かれた口から、囁き程度の声量で、また私には聞き覚えのない言葉が、でもこの間とはちょっと響きの違う言葉が零れた。

そうなるともう、空気がピンと張り詰めたようになって、声をかけるにかけられなくなる。

どうしたものかと迷いながらテーブルと男を交互に見ていると、やがて男がパチッと目を開いた。
灰色の瞳がテーブルをジッと見つめるので、私も自然と、同じ場所を見つめる。

すると次の瞬間、何もなかったテーブルの上に、もやもやと白いものが、靄のような雲のような、何だかよくわからないがとにかくもやっとしたものが漂い出す。

驚きに目を見張る私の目の前で、男はその白いもやもやをまるで粘土のようにこね出して、何かを形作っていく。

かなり不格好だが、フライパン……だろうか？ 取っ手に見えなくもないようなものも飛び出しているし。


「確か、こんな感じでしたよね」


男は確認するように私を見るが、頷くに頷けない出来栄えだ。せめて何を作ったのか言ってから確認して欲しい。
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