夜空に見るは灰色の瞳
「ところで叶井さん、玉子焼きの件ですが、僕は甘いのが好きです」

「……いや、知らないし。私は断然出汁巻き派だから」

「でもフライパンを出したのは僕ですから、今回は僕のリクエストが通るんですよね?」

「何でそう思えるのか不思議なんだけど、物を出したのはそっちでも作るのは私だからね」


言ってしまってから、いつの間にか作る流れに持っていかれたことに気が付いた。


「では僕も手伝いましょう。調味は任せてください。叶井さんは、焼く方に集中してくれていいですよ」

「……任せられるか」


手伝いという形で調味を担当し、さりげなく自分好みの甘さにしようとしたってそうはいかない。

全く……とため息を零しながら、立ち上がってキッチンに向かう。
男の分も作らなければいけないのはどうにも納得いかないが、お腹が空いたので朝食は食べたい。

隣で男が調味に煩く口出ししてくるのになんやかんやと言い返しながら作り上げたのは、普段作る物よりも甘味が強い玉子焼き。
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