日常(仮)
施設の子たちがいるところに案内された。
きっと、気が合う子が見つかるわ。と言われたけど、別になんでも良かった。

「みんな、新しいお友達を紹介します」

みんなの視線が集まる。
先生がそう声をかけなくても、ていらを連れたどこの誰だかわからない私が入ってきただけで注目されていた。

「佐藤心愛ちゃんです。…挨拶できるかしら?」

「…よろしくお願いします。」

そう一言だけ言った。

「こころ、またそれだけ~?」

ていらが横から言う。
施設を転々とするようになって、最初の挨拶は何回もしてきた。
ここにもどのくらいいられるかなんてわかんないじゃん。

「緊張してるの?」
「なんで猫と一緒なの?」
「なんか暗い子だね」

ひそひそ話されてるのがわかる。

「みんな心愛ちゃんにいろんなこと教えてあげてね。」

最初はみんな私のところに興味本位でやってきた。
ていらのこと聞いてきたり、先生は意外と怒ると怖いとか、教会でお祈りすることもあるとか。
たくさんの話をしてくれたけど、私の反応が薄いせいかみんなすぐにいなくなって、今までどおりに過ごし始める。

「こころ、もっとニコニコしなよ?」

「楽しくも、うれしくもないのにニコニコなんてできないよ」

ていらと二人で施設を探検してた。
どこに何があるのかわかんないから。
小さな倉庫みたいな部屋をみつけた。クリスマスツリーとかハロウィンの飾りみたいなのが置いてあった。
誰も来なさそうだし、ていらと普通に会話してるのにちょうどいい場所だと思った。

「ねえ、こころ。ずっと、そんなんじゃ友達できないよ?」

「友達なんていらないよ。ていらがいればそれでいい。」

「もー。」

今更、友達が欲しいなんて思わない。
特別なんて望まない。
だから、もう私から何も取ろうとしないで欲しかった。

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