酔える声の裏側〜イケメン声優に溺愛されちゃった!?〜
「はぁ?
なんだよ、その意味わかんねー事情。」

「すみません...。」

「つまり、お前はそのなんとかマカとかいう奴の差金で佐伯のマネージャーになったってことか。」

「はい...。
でも、その、騙してるとかじゃなくて...。」

「佐伯にも筒抜けみたいだしな。
お前にスパイ活動とかそもそも無理だわ。」

無理ってことはないけど...。

「で、そいつのプロデュースじゃないと意味がないから、佐伯を歌手デビューさせるわけにはいかないってわけだな。」

「そうです。」

「じゃあさっさと事務所に掛け合ってそいつがプロデュースできるようにしろよ。」

「それが、なかなか上手くいかなくて...。
事務所では既にお抱えのプロデューサーがいますし、彼女はあまり関わりを持っていないので、説得が難しいんです。」

「うわ、めんどくさ...。」

「それに...言いづらいんですけど、
聖塚さんは、佐伯さんと御園さんが親交を深めることをあまり良く思っていないみたいで...。」

「は?なんで?」

「そもそも事務所はあくまで御園さんを売り出したいようなので、佐伯さんがメインにならないのが気に入らないのかもしれません。」

「要するに俺はいらないってこと?」

「そういうことではないと思うんですが...。」

「まあいい。
それはお前じゃなくて、そのプロデューサーの意見だろうしな。」

「はい...。」

「気に入らねえなら直接言ってくればいいのに。」

「それも事務所を通さないと難しいんですよ。」

「なんでも事務所事務所って...。
お前、それでまさか、そいつのために佐伯の事務所移籍させるとか言わねえよな。」

「それは...。」

「マジかよ。
それは絶対嫌だからな。」

「私も...嫌ですけど。」

「とにかく、それだけは勘弁しろ。
せっかく佐伯と仲良くなれたのに、事務所だなんだで別々になるのは嫌だ。
お前だって分かってるだろ。」

「はい...。」

「お前も分かってるなら、そこんところきちんと配慮しろよ。」

分かってるけど...。

「まあそれはともかく。
せっかく来たんだからもっと歌おうぜ。
ほら、お前も佐伯と歌うんだろ?」

「あ、はい...。」
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