酔える声の裏側〜イケメン声優に溺愛されちゃった!?〜
「おかえりなさい。
疲れてるわね。」

「うん...。実はね...。」

...。


「なるほど。
やっとあの人が役に立ちそうな仕事が見つかったってわけね。」

「あの人って、お父さん?」

「そう。まあ、もともとまつりを芸能界デビューさせようと思ってたし、試してみたら?」

「そうはいっても...。私、自信ない。」

「自信がないままだと、いつまで経ってもまつりのカリスマ性が引き出せないわよ。

そこは彼に教鞭を任せるわ。

失敗してマネージャーを解雇されても、優しい佐伯さんならまつりのことをいつまでも愛してくれるわよ。だからあんまり落ち込むことないわ。」

「うん...。マカは不憫だけど。」

「一回は曲出せたんだから、いいんじゃない?それはまつりのせいじゃないわ。」

「...そうだね。」

「とにかく、頑張りなさい。」

「うん。
お父さんは?」

「今、夕飯の薬味にネギが必要だから買いに行かせてるわ。」

「一時期大物ミュージシャンだったのに、今はネギを買いに行ってるんだ...。」

「昔の栄光なんて、ほぼほぼ役に立たないものよ。
でも、ここまできてまだ懲りないみたいだから、扱いやすくはあるわね。」

「懲りない...っていうか、お母さんも愛されてるんだよ。」

「当時は遊び人で、女ったらしなんじゃないかって散々言われてたけど、実際は一般女性に愛想尽かしてるなんてロックミュージシャンとしてなんだか笑えるわ。」

「本当は嬉しいくせに。」

「嬉しくないわ。心配なだけよ。」

素直じゃないな...。
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