酔える声の裏側〜イケメン声優に溺愛されちゃった!?〜
一方で、佐伯さんはテレビにラジオに雑誌の取材...という感じで忙しそうだった。

そういえば、初バラエティ出演だっけ。

オーディションにかかりきりで、内密には小野寺さんに任せちゃってるから、大まかなスケジュールしか把握できず...。

でも、最近は佐伯さんのお家に泊まっちゃってるから、なんか、事前収録の佐伯さん出演のバラエティ番組を本人と一緒に見るっていう不思議な感じに...。

佐伯さんはちょっと恥ずかしそう。

でも...これは一ファンとしては間違いなくお宝映像だ。

芸人の司会者の人にも難なく話を合わせてるし、面白いことも言うし、何よりやっぱり声がいいな。

「まつりがそんなに真剣に見てるの面白いね。」

「普段はあまりバラエティは見ないんですけど、こんな感じなんですね。」

「すごく緊張したよ。」

「え?
すごく楽しそうなのにですか??」

「初めて特集組まれて自分のこと自分から喋るからね。
俺の日常の話とか、面白くなるのかなってちょっと不安だったかな。まつりのことは言えないし。」

「歌手活動もされてますけど、歌は普段から歌ってるんですよね。」

「昔から好きだからね。」

佐伯さんのシングルやアルバムの売上数を番組で提示されて、改めて見るとすごいなって思う。

「ユウトのことや聖塚さんのこともきかれたよ。」

「あ、ほんとだ。今その話やってます。
御園さんとは特に仲良いですもんね。」

「うん。」

それにしても...。

他の芸人さんやタレントさん、俳優さんを凌駕する圧倒的存在感...。

桁違いのイケメン度が画面越しでも分かる...。

って、当の本人が私の隣でテレビ見てるのに...。

不思議...。

そんな中、

アニメのセリフを試しに言って欲しいという司会者の無茶振りが入った。

うわぁ...私もこんなに真正面から決め台詞言ってるのみたことない...!

素敵すぎる!!

佐伯さんが今いなかったら悶えっ放しで鼻血まで出してたかも!!

こ、こらえなきゃ!!

こらえなきゃ...。

...。



なんだか、



急に、画面越しで話している彼が。


遠く遠く感じてしまった。


...。


テレビで見てるぐらいが私にとってちょうどよかったのかもしれない。

本当は、こんなことしちゃいけないのかもしれないって。

今さら、またそんなこと...。


...??


あ。

手を握られた。

「テレビ見るのもいいけど、俺のことも見てよ。」

「えっと、佐伯さんを見てるんですよ?」

「ほんと?」

「はい、だって佐伯さんがテレビに出てるから、かっこいいなって思って。」

「ふーん...。

じゃあ、もうすぐ番組終わるから俺に構ってくれる?」

「そのあとは佐伯さんの出てるCMがきっと流れて、さらにこの後の番組のナレーションも佐伯さんじゃなかったでしたっけ?
さらにそのあとはアニメですね。」

「そうなの?そんなに出てるんだ。
自分ではあまり把握してなかったな。」

「普段テレビはあまり見ないんですか?」

「見ることには見るけど、休日に録画したの見たり、DVDとかかな。
基本は家に帰ったらご飯食べて寝るだけかも。」

「お忙しいですもんね。」

「見ようと思えば見れるんだけどね。
決まった時間までに早く寝ないと今度は夜遅くまで眠れなくなっちゃうから。」

「そうなんですか?」

「うん。なんか寂しくなってね。
寝付けなくなっちゃう。」

「今は、私がいるから平気ですか?」

「うん、平気。
一緒に寝てくれるでしょ。」

「佐伯さんはきっと...そうやって寂しくなってもあまり人には見せないですよね。」

「弱み...かな。

見せてはいけないとは思ってないけど、あえては見せないかな。

でも、まつりのときは別だね。
頼ってばかりだ。」

「もっと頼ってください。」

「まつりもね。」

「はい。」

「まだテレビ見るの?」

「えっと...佐伯さんはもう寝ます?」

「まつりが寝るまではここにいるよ。
ぎゅっとしてるから、好きなだけどうぞ。」

「ぎゅって...?

...ひゃ...。」

「あったかいね。
大好き。」

「佐伯さん...あまい...です...。」

「見るの集中できないかな。」

「いいんです。佐伯さんの過剰摂取は毒にはなりませんから。むしろ栄養になって、元気になります。」

「...かわいい。」

倒される...!

でも、その前にさっとクッションしいてくれて、

「こうやって寝転んで見たほうが楽じゃないかな。」

って。

私が寝転んで佐伯さん(画面)の声を堪能してる間に、佐伯さん(リアル)は私を抱いてそのままこのソファベッドでお眠りになるおつもりかな。

なんか、いいなぁこれ。


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