酔える声の裏側〜イケメン声優に溺愛されちゃった!?〜
「最近、仕事は大変?」

「はい...。でも、上手くいきつつはあると思います。

佐伯さんは、どうですか?」

「仕事は楽しいよ。
ただ、余裕はなくなってきてるかもな。」

「そうなんですか。無理はなさらないように...。」

「うん、分かってる。
皆にも迷惑かかっちゃうからね。」

私と会ってて大丈夫かな。

色々気をつかうんじゃないかな。

「あの...最近はお忙しいみたいですけど、困ったこととかないですか?」

「俺は大丈夫なんだけど、マネージャーさんは本当に忙しそう。それに聖塚さんもかなり悩んでいるみたいだね。よく話をきいてくるよ。」

「なるほど...。今日もそうでしたよね。」

「ああ。急遽、話をしたいって。
遅くなってごめんね。」

「いえ。
どんなことを話されたんですか?」

「普段は会話って感じだけど今日は曲や演出に関する相談が多くて。」

「そうなんですか...。」

「でも、俺はその道に詳しいわけじゃないから、いつも大したことは言えないんだけどね。」

「そうですよね...。お忙しいのに大変じゃないですか?」

「いいや。でも、どうしたらいいのか分からなくなるときはあるよ。

純粋に頼ってくれているのは分かるんだけど、あまり責任は負えないからね。」

「そんな重大なことを話しているんですか?」

「些細なことだけど、積み上げていけば本人にとっては重要なことかもしれないなって。

また歌詞や曲を作るのに協力してくださいって言われる。

それも、あまり積極的に公開していこうって意識まではないみたいで。」

「どういうことですか?」

「自分のためだけの音楽を探したいって。
もう誰かのために曲を作ることはやめたいって言ってたな。」

「だから...自分のために、佐伯さんに曲や詞を...?」

「今日、過去に作った曲を持ってきて言ってたよ。
これ以上のものは作れない。自分だけのものにしていれば、盗られることもなかったかもしれないのに。私はもうこれまでかもしれないですって。」

「...。」

「どうにかしてあげたいけど、そういうお節介はかえって彼女を追い詰めてしまうかもしれない。

俺にできることはもう何もない。

今日は彼女にそのことを正直に伝えたんだ。可哀想だけど、それが一番彼女のためかもしれないって思って。」

「はい...。
それで、どうでした?」

「納得はしてくれたみたいだけど、残念そうだったよ。
不甲斐ないよね。」

「いえ、そんなこと。佐伯さんは何も悪くないです。」

「...。」

...不甲斐ないのは私だ。
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