もう二度ともう一度
「修学旅行の持ち物は鞭とキャメラを」
修学旅行当日。早川はやけに長いカメラを首にぶら下げて、指抜きグローブで現れた。
大枚叩いたカメラで彼は思い出の全てをカメラに収めるつもりなのだろう。
「なんや!火曜サスペンスの人け?」
二谷はあの人の名前が出てこないが、不思議と誰にでも通じる人物を例えた。
「まあ、一枚!」
早川がそう言うと旅行を前に上機嫌の彼女はポーズを取り、その周りにクラスの友達が集まる。
『よぉし、撮るぞ・・!』
バスが新幹線の停車駅に着くと早川はそれを激写。
野々原が近寄るとそれを激写。二谷と高見はフィルム温存の為に控えめに激写。
美しい景色を激写、博多駅では班行動を無視してブルートレインを激写中、担任に連行されていた。
「もう!同行してる写真屋さんより撮ってない?」
野々原はちょっと早川に怒ってみせた、せっかく楽しい旅行なのに撮影に夢中で相手にしてくれないからだ。
それでもまだ彼は班でお昼に入ったレストランで、出て来た料理を撮影している。
「シャッターで返事すんな!眩しいねん!」
そして、もしかしたら数時間ぶりに彼は口をきいた。
「明日はハウステンボスだな・・」
同席した皆は同意するも、それがなんだと言うのだ?と言う顔で箸なりフォークを動かす。
早川はそのまま続ける。
「ああ・・早くたくさんの美しい花に囲まれた野々原を撮りたい!」
暴走気味の早川。恥ずかしさに吐き出しそうな面々の足が並ぶテーブルの下では、高見真知子の爪先が早川の脛にめり込む。
「グゥッ!?」
「早川君、あまりマナーが悪いと取り上げて先生に預かって貰うわよ?私、班長だから」
そして一行は長崎への道すがら、太宰府天満宮へ立ち寄る。
「二つ、いや三つください」
売店でフィルムを補給し、早川はベンチに腰掛けていた。
とにかく野々原だ、野々原を撮りたい。それから別の組の宮竹と言う少女、それに浜さんをこっそり撮影したいと考えていた。
早川は自分の美意識に沿うと思う物を前に、衝動を抑えられない体質のようだ。
「まだ、撮りたいの?」
宮まで口にして、なんとかブレーキ出来た、野々原が飲み物を買って持って来てくれたのだ。さっきの昼食のお礼らしい。
「いやぁ、最近買ってね。ちょっとハマっただけなんだ!」
とても中学生のお小遣いで買えそうにない、いやに長いカメラ。野々原も少しチクリと刺して来た。
「女の子、ばっかりだったりして・・」
早川は否定したが、フィルムの七割はそれである。そのうち、笛の音で皆集まってバスに乗り込んだ。
目的地の長崎ではホテルに着いて各々、部屋に荷物を置いて夕食まで市内を観光出来る時間があった。
とは言ってもすぐに暗くなるし、時間も短く範囲は決まっている。その後、室内施設でバスケ大会があるそうだ。
さっさと生徒を寝かしつけたい、如何にも中学生の修学旅行らしい。 そんな中、市内観光では長崎の街と野々原を、そして今そのバスケ大会に向けてスナイパーの眼が鋭く光っていた。
「・・・・」
観覧席で片膝を付いた早川は、無言でシャッターを切り続ける。もちろん、今は絶滅したブルマを被写体に捉えてだ。
こんな早川の眼光は見たことが無い。それは鬼気迫るモノだった。
しかし、背後からなにかがカメラに迫る。
ビシッと言う鋭い音がカメラを床に滑らせて行く、これは鞭だ。
「なにをするッ!?」
「フン!貴様こそ、何を必死で撮影しているのだ?この変態親父が!」
高見真知子が恐ろしい形相で鞭を構えていた。
咄嗟に椅子に隠れる早川。しかし、通路に立たれ遮蔽物は無くなる。
「ぐぁッ!」
「こぉの変態!ロリコン親父!」
鞭と罵り言葉が鋭く心と身体を痛めつける。
「バカな、これは芸術だ!」
その口を閉じろとばかりに頬を鞭が襲う、かなり鍛錬されたさばきだ。
「フィルムもカメラも没収だ、こちらで検問する!」
させるかとばかりにカメラを拾いに走る早川、しかし彼女の鞭はカメレオンがハエを捕食する様にカメラを捕える。
「や、やめろぉ!ぐぅあああああぁ〜〜!!」
奪い返そうとした早川の下半身に鞭が叩きつけられる。それは漫画の様だが漫画ではあり得ない「下半身だけ衣服がちぎれた
」状態になった。
薄いハーフパンツとトランクスなど、簡単に切り裂ける腕前だったのだ。
「早川、貴様のカバンにネガは無かった。こっちに持って来ているだろう?出せ。そうしたらジャージを渡してやる。後、前を隠しなさい、早く!」
高見真知子は早川の荷物からジャージを持って来ていて、それを足元に落とした。
このまま断れば下半身丸出しで集合点呼されてしまうだろう。
「おのれぇぇ、・・わかった、降参する!」
後に確認の為に現像されたフィルムの内容は以下の通り。
・野々原あずさ…約50%
・風景・列車等…約30%
・違うクラスの女の子(早川好み)…10%
・残り→その他
修学旅行から戻り、しばらくするとそれらは現像されてから検問により、教育的修正と削除が行われてカメラを含む一部が返却された。
翌日、カメラを奪われた早川はハウステンボスで「写ルンです」を駆使し、なんとか野々原を撮影していたのだった。
大枚叩いたカメラで彼は思い出の全てをカメラに収めるつもりなのだろう。
「なんや!火曜サスペンスの人け?」
二谷はあの人の名前が出てこないが、不思議と誰にでも通じる人物を例えた。
「まあ、一枚!」
早川がそう言うと旅行を前に上機嫌の彼女はポーズを取り、その周りにクラスの友達が集まる。
『よぉし、撮るぞ・・!』
バスが新幹線の停車駅に着くと早川はそれを激写。
野々原が近寄るとそれを激写。二谷と高見はフィルム温存の為に控えめに激写。
美しい景色を激写、博多駅では班行動を無視してブルートレインを激写中、担任に連行されていた。
「もう!同行してる写真屋さんより撮ってない?」
野々原はちょっと早川に怒ってみせた、せっかく楽しい旅行なのに撮影に夢中で相手にしてくれないからだ。
それでもまだ彼は班でお昼に入ったレストランで、出て来た料理を撮影している。
「シャッターで返事すんな!眩しいねん!」
そして、もしかしたら数時間ぶりに彼は口をきいた。
「明日はハウステンボスだな・・」
同席した皆は同意するも、それがなんだと言うのだ?と言う顔で箸なりフォークを動かす。
早川はそのまま続ける。
「ああ・・早くたくさんの美しい花に囲まれた野々原を撮りたい!」
暴走気味の早川。恥ずかしさに吐き出しそうな面々の足が並ぶテーブルの下では、高見真知子の爪先が早川の脛にめり込む。
「グゥッ!?」
「早川君、あまりマナーが悪いと取り上げて先生に預かって貰うわよ?私、班長だから」
そして一行は長崎への道すがら、太宰府天満宮へ立ち寄る。
「二つ、いや三つください」
売店でフィルムを補給し、早川はベンチに腰掛けていた。
とにかく野々原だ、野々原を撮りたい。それから別の組の宮竹と言う少女、それに浜さんをこっそり撮影したいと考えていた。
早川は自分の美意識に沿うと思う物を前に、衝動を抑えられない体質のようだ。
「まだ、撮りたいの?」
宮まで口にして、なんとかブレーキ出来た、野々原が飲み物を買って持って来てくれたのだ。さっきの昼食のお礼らしい。
「いやぁ、最近買ってね。ちょっとハマっただけなんだ!」
とても中学生のお小遣いで買えそうにない、いやに長いカメラ。野々原も少しチクリと刺して来た。
「女の子、ばっかりだったりして・・」
早川は否定したが、フィルムの七割はそれである。そのうち、笛の音で皆集まってバスに乗り込んだ。
目的地の長崎ではホテルに着いて各々、部屋に荷物を置いて夕食まで市内を観光出来る時間があった。
とは言ってもすぐに暗くなるし、時間も短く範囲は決まっている。その後、室内施設でバスケ大会があるそうだ。
さっさと生徒を寝かしつけたい、如何にも中学生の修学旅行らしい。 そんな中、市内観光では長崎の街と野々原を、そして今そのバスケ大会に向けてスナイパーの眼が鋭く光っていた。
「・・・・」
観覧席で片膝を付いた早川は、無言でシャッターを切り続ける。もちろん、今は絶滅したブルマを被写体に捉えてだ。
こんな早川の眼光は見たことが無い。それは鬼気迫るモノだった。
しかし、背後からなにかがカメラに迫る。
ビシッと言う鋭い音がカメラを床に滑らせて行く、これは鞭だ。
「なにをするッ!?」
「フン!貴様こそ、何を必死で撮影しているのだ?この変態親父が!」
高見真知子が恐ろしい形相で鞭を構えていた。
咄嗟に椅子に隠れる早川。しかし、通路に立たれ遮蔽物は無くなる。
「ぐぁッ!」
「こぉの変態!ロリコン親父!」
鞭と罵り言葉が鋭く心と身体を痛めつける。
「バカな、これは芸術だ!」
その口を閉じろとばかりに頬を鞭が襲う、かなり鍛錬されたさばきだ。
「フィルムもカメラも没収だ、こちらで検問する!」
させるかとばかりにカメラを拾いに走る早川、しかし彼女の鞭はカメレオンがハエを捕食する様にカメラを捕える。
「や、やめろぉ!ぐぅあああああぁ〜〜!!」
奪い返そうとした早川の下半身に鞭が叩きつけられる。それは漫画の様だが漫画ではあり得ない「下半身だけ衣服がちぎれた
」状態になった。
薄いハーフパンツとトランクスなど、簡単に切り裂ける腕前だったのだ。
「早川、貴様のカバンにネガは無かった。こっちに持って来ているだろう?出せ。そうしたらジャージを渡してやる。後、前を隠しなさい、早く!」
高見真知子は早川の荷物からジャージを持って来ていて、それを足元に落とした。
このまま断れば下半身丸出しで集合点呼されてしまうだろう。
「おのれぇぇ、・・わかった、降参する!」
後に確認の為に現像されたフィルムの内容は以下の通り。
・野々原あずさ…約50%
・風景・列車等…約30%
・違うクラスの女の子(早川好み)…10%
・残り→その他
修学旅行から戻り、しばらくするとそれらは現像されてから検問により、教育的修正と削除が行われてカメラを含む一部が返却された。
翌日、カメラを奪われた早川はハウステンボスで「写ルンです」を駆使し、なんとか野々原を撮影していたのだった。