こんぺいとうびより
「・・・今日はもう深夜だし、泊まっていって?このソファ、ベッドになるから。ブランケット持ってくるわね。」

「いいのか?寝室に行って君のこと襲うかもしれないよ?」

「寝室鍵かかるから。」

「そうか・・・。」

「じゃ、私シャワー浴びてもう一度寝るわ。あなたもシャワー浴びるのならどうぞ。あっちのドアだから。バスタオル置いておくわね・・・ごめんなさい、貸せる部屋着はないんだけど・・・。」

───元彼の物は彼が持って行ったし・・・。

一瞬静来の顔が曇ったのを見て、浩斗は明るく言った。

「大丈夫。このパンツこう見えて柔らかくて履き心地いいし、家でもそのまま寝ちゃうことよくあるんだ。」

「・・・そうなの。あ、明日朝ご飯作るからよかったら食べてってね。」

そう言って着替えを取りに寝室に向かおうとした彼女を浩斗が呼び止めた。

「・・・静来。」

「え?」

「やり直そうって言ったこと、冗談とかノリじゃないんだ。それだけは信じてほしい。」

「・・・わかってる。あなたは軽そうに見えて、ノリや冗談で適当なこと言わないもの。」

「『軽そうに見えて』は余計だな。」

「ふふ。」

「だから君は・・・。」

「え?」

「いや、何でもないよ。」

───だから君は葉吉にひかれたんじゃないか・・・?あいつも俺と同じで冗談を言えないタイプだ・・・君の心の中にまだ少しは俺が・・・なんて、都合良く考え過ぎだな。ただそういう男がタイプというだけだろう。

浩斗はまだ3分の2以上残っている缶チューハイに手を伸ばした。静来に復縁を提案する為に、飲み会でもほとんど飲まないようにしていたのだった。
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