こんぺいとうびより
「ねえ、この前も言ったけど私はあなたのことはもう・・・。」

「・・・本当に?」

「ええ。」

「試してもないのに?」

「試さなくても自分の気持ちはわかるわよ。」

その言葉が彼に届くと、二人の間の空気がピンと張り詰めたような気がした。

「じゃあ、俺は今から『付録のこと教えてくれてありがとう』という意味で君にハグをするよ。」

「だ、駄目よ、会社でそんなことしたら。」

「ビジネスハグだよ。」

「ここは日本なのよ?あんまりそんなことしないわよ。しかもちょっと知ってること話しただけでしょう?展開が強引過ぎるわ。」

「もう、なりふり構ってられないんだ。会社で君を見る度胸が苦しくなる。君が俺のこともう何とも思ってないなら、ハグしても何も感じないって証明して?」

浩斗は切羽詰まった表情で今にも触れそうな位置にまで近寄ってくる。

「こ、今度は本当に蹴るわよ。今日はパンツだし。」

「君に触れられるのなら喜んでそのリスクを負うよ。」

浩斗は毅然とした口調でそう言うと静来をグッと抱きしめた。
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