こんぺいとうびより
「!!!」

すぐに腕の力がもう一段階強くなる。

───香水、あの頃と変わってない・・・懐かしい・・・。

静来は何度も顔を埋めたことのある彼の胸に安心感を覚えた。

「君が変わってなくて良かった。大人にはなってるけど、あの頃の、俺が好きだった静来のままだ。人に見えないところで相当な努力をしてきたことも知ってるし、実は結構隙だらけだ。」

「・・・とてもビジネスハグには思えないんだけど。」

浩斗の想いが痛いくらいに伝わってきてなんだかこちらまで苦しくなってくる。

「俺も大人になったと思ってたけど、君に触れたらとても冷静ではいられないな。」

いつも余裕ありげに話す彼なのに、何かが込み上げているような、泣き出しそうにすら思える声でつぶやいた。

「・・・誰か来たら困るから・・・。」

「誰も来なかったら困らないのか?」

「そういうわけじゃ・・・。」

───こんなところでこんなこと、よくないことだってわかっているのに魔法にかけられたように体が動かない。全身が熱くて、でもホッとして・・・なんというか、収まるべきところに収まっているような気がする・・・。

「・・・静来・・・嫌がらないのなら、先に進むよ?」
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