こんぺいとうびより
「だから違うって。うち、こっちで暮らすことにしたんだ。」

「え?マジ?仕事は?」

「辞めた。こっちで仕事見つけたの。フルタイムじゃないけど、動画の方も登録者数増えて忙しくなってきたしちょうどいいかなって。」

「そうなんだ。でも日本でもハワイでもなくなんでここに?ニューヨークとかでも良かったんじゃない?」

「それはさぁ・・・。」

───相変わらす鈍いなぁ。カイがいるからだよ。カイが帰国するっていうからうちは・・・って言ったらストーカーみたいか。というか今気づいたけどうちってストーカー!?

はっと気づいて目を見開く彼女をカイは気にする様子もなく言った。

「どこに住んでるの?」

「この近くなんだけどさ、実は上の部屋が水漏れして、うちの部屋もびしょびしょになっていきなり住めなくなったんだよ。いつ直るのかもよくわかんないし。まー、動画のネタにはなったけどね、はっはっは!」

「さすがさよか。バイタリティの塊だな。でも大変でしょ?直るまでどこで暮らすの?」

「仮住まいを手配してくれるみたいだけど、それまで数日はホテル暮らしだよ。昨日のホテル一泊しか空いてなくて、チェックアウトしてきたから今日はまた別のとこ探すの。ま、これも動画のネタにはなるけど。」

「よかったら、うち来れば?」

カイは『通り道だから車乗ってく?』とでもいうような軽いノリで言った。
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