こんぺいとうびより
「リンくん見て、さよかさんのお子さん達かわいいよ。」

秋めいて程よい気温の休日、窓を開けてソファに座り日なたぼっこをしながら衣緒は目を細めて言った。

鈴太郎は衣緒の膝を枕にしてくつろいでいて、目の前に差し出されたスマホに目をやる。

「新しい動画アップされたのか?」

「ううん。ネットには子供達の顔は出してないから、これは個人的に送ってもらったやつ。」

「いつのまにか仲良くなってるな。衣緒、彼女とは性格も趣味も全然違うけど、それが逆にいいのかな。二人でどんな話するんだ?・・・お互いの旦那の愚痴とか?」

「・・・。」

鈴太郎がスマホから彼女に目を移して悪戯っぽく言うと、無言で目を逸らされて焦る。

「え・・・図星?」

「・・・逆、だよ。」

目を逸らしたまま少し頬を染めて言う彼女にキュンとしてしまう。

「旦那自慢・・・ノロケ?どんなこと言ってるのか知りたい。」

「・・・言えないよ・・・。」

衣緒の手をぎゅっと握って顔を見つめると、彼女はますます赤くなった。愛おしさが溢れてきて、もう片方の手で彼女の熱い頬に触れる。

「衣緒、教えろよ。」

「ま、また、今度ね・・・ほら見て、男の子も女の子もすごくかわいいよ。」

動画の再生ボタンを押すと画面の中で男女の双子が楽しそうに遊んでいた。

「おーほんとだな。自分の子でもないのに何回も観たくなっちゃうな。」

目尻を下げて言う彼に衣緒はゆっくりと問いかける。

「リンくんは、子供が産まれたら一緒にどんなことして遊びたい?」

「うーん、普通だけど公園行ったりとか・・・あ、一緒にパン焼きたいな。」

鈴太郎がその風景を想像して楽しそうに言うと、衣緒は自分のお腹に手を当てて、お腹に呼びかけた。

「・・・だって。一緒にパン焼こうね。」

「・・・?」

鈴太郎は優しく微笑む彼女の顔を見つめる。

「・・・衣緒、今『子供が産まれたら』って言った?『子供が出来たら』じゃなくて?」

「うん。」

「ま、まさか!?!?!?」

震えながら顔を横に向け、彼女のお腹を見る。

「・・・うん。」

衣緒は静かに、だがはっきりと頷いた。

「え~っ!!!!!!」

鈴太郎は叫びながらソファから転げ落ちた。





───『あんず飴の約束』 完───
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