お仕えしてもいいですか?
「もしかして……犬飼さんは私の身の回りのお世話がしたくて悩んでいたんですか?」
「はい」
「私は到底お嬢様と呼ばれるような身分ではないのですが……」
「承知しております」
「人違いじゃありません……?」
「いいえ」
一縷の望みを託して尋ねてみても、犬飼にことごとく一蹴された。
木綿子はいっそのこと顔を覆って現実逃避してしまいたかった。
(冗談でしょう!?)
しかし、当の犬飼は木綿子の心を見透かしたように大真面目に言うのである。
「あなたを一目見た時から私の心は決まっておりました。お嬢様に心からお仕えしたいというこの気持ちは決して嘘でも冗談でもありません。あなたと言葉を交わすたびに、この方にお仕えしたい、お世話をしたいという気持ちばかりが募るのです」
「はあ……」
木綿子は本格的に途方に暮れた。