お仕えしてもいいですか?
「お願いです、お嬢様」
「お、お嬢様!?」
お嬢様と呼ばれたことに驚いて、素っ頓狂な声を上げてしまう。
木綿子が驚いている間に、犬飼は椅子から転がり落ちるようにして床に平伏した。
「私のような下賤の輩に身の回りのお世話をさせるなど、お嬢様にとっては許しがたいこととは存じますが、なにとぞ、なにとぞ仕えることをお許しください」
「え!?あの、犬飼さん!?」
……お願いもなにも、まだ自分はこの状況を受け入れられていない。
木綿子は徐々にヒートアップしていく犬飼を前に為す術がなかった。
そのうち、女性に土下座する異様な光景に気が付いた周囲がにわかに騒がしくなった。
木綿子は平伏してその場から動かない犬飼をなんとかなだめて、元通りに椅子に座らせた。