没落姫の溺愛婚②~双子の旦那様に愛されすぎて私、困ってます~
一章「双子の旦那様と桜の宴」
旦那様は嫁が愛しくて……。
ひらひらと、淡い色の花びらが柔らかい風に吹かれながら、優雅に舞い上がる。
それは、まるで踊っているかのように見えて、とても美しい。
はらはらと、ゆっくりと散りゆき、凪いだ池の水面に落ちては緩やかな波紋を広げていた。
薄紅色の桜が平安京を彩る、美しいこの季節。
昼間に見ても、夜間に見ても、人の心を掴んで放さないその花を愛でない人はきっと、滅多にいないだろう。
その証拠に、その目にも鮮やかで美しい花を愛でるため、今上帝のおわす宮中でも、宮家主催の桜の宴が盛大に催されていた。
「あの……芳哉様、彬親様……」
その宮中での宴の最中、最近結婚したての双子の旦那様の間に挟まれていた彩希は、困ったように眉尻を下げながら名前を呼んだ。
「うん?
そんな顔してどうしたの、彩希?
あー……、もしかして、宴に疲れちゃったかな?」
宮家主催の宴に出席するのは初めてだもんね。
疲れちゃっても仕方ないよね、と右隣から優しい声がかけられた。