キミが教えてくれたこと(改)
「あとはそうだなー。明るくみんなに挨拶とか…まだ難しいか…」
うーん、と唸りながら目を瞑って私の事を考えてくれている。
私はずっと疑問に思ってたことがあった。
「ねぇ、は、晴人ってどうしてそこまで優しくしてくれるの?」
恥ずかしい、名前で呼ぶだけなのに噛んでしまった…
「え?そう?」
気づかれてなかったのでそのまま何も無かったかのように話しを続ける。
「だって、誰だってめんどくさい事には関わりたくないでしょ?ましてや私みたいな…」
「出た、ネガティブ茉莉花。私みたいな、とか私なんてって言うのやめろよな〜」
そう言って人差し指で頭をグリグリ押された。
なにこれ、地味に痛いんですけど…。
「んー、なんだろうな〜…なんか放っておけないんだよな、茉莉花のこと」
「え?」
両腕を組み眉間に皺を寄せながらそう言った晴人の言葉に胸が高鳴り、また顔に熱が集中する。
なんでだろうな〜と考え込んでいた晴人が急に思いついたように、あ!と表情が明るくなった。
「昔飼ってた猫に似てるんだと思う!」
「ね、猫!?」
頭が混乱する。
え?なに?猫??猫って言ったよね、今。
「二人の時は懐っこいのに、家に遊びに来た友達とか知らない人とかに超警戒すんの!そういうとこ似てんだよなー!そーだそーだ、ミーコだ!」
ミーコ懐かしいなー、なんて目を細めて空を見上げる晴人の端整な横顔を、許されるならぶん殴ってやりたい。
何故だかそんな怒りがふつふつと湧いて私は勢いよく立ち上がった。
「バッカみたい!!!」
「え?あ、ちょっと!」
生えている雑草達が自分が歩く度にザクザクと鳴るのに気付き、無意識に力を入れて地を踏みしめているんだとわかった。
「おーい!何怒ってんだよミー…、茉莉花ー!」
後ろで叫んでくる晴人を無視して私はその場を離れる。
っていうか、絶対今ミーコって呼ぼうとしたよね!?
そのまま晴人を置いて私は教室に向かった。
あの人ってほんと、デリカシーが無い!
猫って!!
別にミーコが悪いわけじゃないけど、もっと他に言いようはあったでしょ!?
別にそんなにイライラすることでも無いことは冷静にならなくても分かるのに、何故か感情が抑えられない。
晴人といると自分の知らない自分がいつも顔を出してくる。
その正体が何なのか、まだ今の私にはわからないけど…
その時だった、
「きゃあ!」
「ぅあっ!」
廊下の曲がり角で急に視界が暗くなり視界が遮られた後、鼻の頭に痛みが走った。