キミが教えてくれたこと(改)
「私も川瀬さんも深く人と関わらない事で自分を守ってきた。だけど、川瀬さんは私と違って距離を置く事なく周りの人と関われて凄いなって思う。私も川瀬さんみたいになりたいって思った」
「林さん…」
スカートの裾をぎゅっと握りしめて一度深呼吸をする。
「でも、他の誰かになる事が出来ないのは分かってる。だからこそ、自分がどうしたいかを考えてみたの」
まっすぐ川瀬さんを見つめる。
「私、川瀬さんと友達になりたい!…だめかな?」
彼女は私の言葉に驚きつつも、ゆっくり目尻を下げると一度頷いた。
「私、昨日林さんと話して胸の中にあったわだかまりがすっと溶けた気がした」
「え?」
彼女は持っていた財布から大切なプレミアカードを取り出した。
「恥じる必要なんてない。好きなことに自信を持っていいって言ってくれた時、自分は自分のままでいいって認めてあげることができた。みんなに見せてる私も今の私も、川瀬百合なんだって。だから…、気付かせてくれてありがとう」
真っ直ぐ、笑顔で言う彼女が輝いてみえた。
「自信を持つって、まずは自分を好きになるってことなんだね。うん、川瀬さん今すごく綺麗だよ」
川瀬さんは少し頬を赤く染めた。
「私も、林さんと友達になりたい。林さんがいい。」
川瀬さんはスカートの裾を握っていた私の手を取り、両手で包んだ。
「こちらこそ、よろしくね」
その言葉に私は何度も頷いた。
「じゃあ茉莉花ちゃんって呼んでもいいかな?」
「うん…」
少しこそばゆい感覚があったが、それと同時に嬉しさも感じた。
「私のことは百合か、ゆりりん♪って呼んでね!あ、もしくは魔法少女ユリーヌでもいいよ!」
「…じゃあ百合で。」
最後の二つはさすがに呼びづらいよ…ユリーヌ。
「茉莉花ちゃん、これからよろしくね!」
「よろしく!百合」
私達はニコニコと笑い、中庭で一緒にお昼を食べた。
そんな私達を影で見ていた晴人は澄み渡る青空の下、私達の笑い声を聞きながら一度伸びをしその場を離れたそうだ。
「っていうか、また盗み聞きしてたわけ!?」
「"見守ってた"と言って欲しいね」
何が見守ってただか…本当にもうっ。
「!」
誰もいない校舎裏、いつものように晴人と話す昼下がり。
温かい日差しの中、晴人は私の頭を撫でて「よくできました。」と目を細めて笑う。
自分に自信はまだまだ持てないけど、晴人を好きだって気持ちは誰にも負けない自信があるよ。
そうしてまた、私と晴人はたわいもない話しをしながらこのゆっくりとした秘密の時間を過ごすんだ。