キミが教えてくれたこと(改)
駆け抜ける、そしてその先に。
「茉莉花ちゃん!おはよ!」
「茉莉花ちゃん!一緒に教室まで行こう!」
「茉莉花ちゃん!お昼食べよう!」
「茉莉花ちゃん!茉莉花ちゃん!」
先日、友達宣言をしてからというもの百合は何故か私の後をくっついてまわるようになった。
「茉莉花ちゃん!あのね!」
「ちょ、ちょっと待って!わかったから!」
周りはそんな私達を遠目で見て、何があったんだと思考を巡らせているようでチラチラと横目で不思議そうに見ている。
「私、わかったの!なんでこんなに茉莉花ちゃんのことが気になるのかって!」
お昼休みの中庭、二人でベンチに座り私は左手でお弁当を持ち右手で拳をにぎる百合に圧倒されながら話に耳を傾けた。
「私の一番好きなキャラクターがいるんだけど、その子がピンチの時いつも助けてくれる王子様がいるの!」
これ!とスマートフォンの動画を見せられる。
画面の中の彼は所謂イケメンというやつで、白い歯を見せニヒルな笑顔が似合う青年だった。
歯の浮いたセリフを言い、画面いっぱいにキメ顔をする姿がなんとも憎たらしい。
「彼女が悩んだり、落ち込んだりすると優しく包み込んで励ましてくれたり…彼女が敵に敗れそうになった時に颯爽と現れたり…」
百合はうっとりとした表情で画面の中の王子様を見つめている。
「私にとって茉莉花ちゃんはまるでこの王子様みたいなの!!」
「…いや、私一応なんですけども…」
「私の前に颯爽と現れて、ピンチを助けてくれて…私の心のわだかまりを溶かしてくれたのよ…」
「…あなたが教室で踊ってるの見たあげくカツアゲだと勘違いされたんだけども…」
自分の世界に入り込んでしまっている百合に、もう何を言っても通じないとは分かっていても突っ込まずにはいられない。
「茉莉花ちゃんには感謝してるの!もし私に出来ることがあったら何でも言ってね!」
そう笑顔で言う百合に驚いたがすぐに顔をほころぶのがわかった。
友達っていいなぁ…そう素直に思った。
「と、言うことで感謝の気持ちとしてその王子様の衣装作ったから茉莉花ちゃん、着てもらっていいかな!?」
「友達でもそれはごめん」