キミが教えてくれたこと(改)
「はははっ!川瀬って意外におもしろいのなー!」
百合とのそんな出来事を話すと晴人は声を出して目尻を下げて笑っている。
「笑い事じゃないよ…。危うく王子様のコスプレ着せられるとこだったんだから」
短期間で作った割にはなかなかの仕上がりだった服を思い出し、百合の器用さを再確認したがさすがに友達とは言えイベントに行くわけでもなく、ましてや学校であの服を着る勇気はないので丁重にお断りした。
残念がっていたが、いつかは着てもらえる服を作ると妙な挑戦心に火を点けてしまった。
「まぁまぁ。毎日飽きなくていいじゃん?」
しゃがんで校舎の壁にもたれながらこちらを楽しそうに見るハルトに、そうだけど…とため息をついて返した。
「………」
「?どうした?」
私のじっと見る視線に晴人は首を傾げた。
「…その、百合と仲良くなれたこと、すごく嬉しいんだ」
「おう、良かったじゃん」
「………」
「?なんだよ、なんか不安?」
晴人は目を下げながら優しく問いかけてくれるが私は無言で首を振る。
「ここに来るの…少なくなるかもしれない…」
晴人は驚いたように目を見開いた後、ニヤリと笑いながら少し私との距離を縮めた。
二人の肩が触れ合う距離でどくどくと胸が鳴る。
「…寂しい?」
顔を覗き込みながら囁くように問いかけてくる晴人に、私は顔を背けながら視線を下げこくん、と一度頷いた。
はは、と晴人の笑い声が聞こえ、「甘えためっ!」と私の髪を掻き乱す。
私は恥ずかしさのあまりされるがまま何も言わず口を尖らせた。
「…友達が出来たからって俺らの関係が変わるわけじゃねぇだろ?大丈夫。今まで通り影でサポートしてやるよ」
自分で掻き乱した私の髪を次はサラサラと梳かしていく。
「………」
違うよ、晴人。
晴人も寂しいって思ってほしいんだよ。
そんな風に思う私はわがままなのかな?
晴人とは別々に校舎裏を後にし教室へ向かい自分の席につく。
その時ちょうどチャイムが鳴り、担任が少し遅れて入って来た。
その後ろを束になったプリントを持って入って来る百合がいた。
「座れー、LHRの時間だぞー」と言う担任の声にみんな話しながら席についていく。
晴人もいつのまにか教室に帰って来て自分の席に座った。
「今日のこの時間は再来週に控えた体育祭の参加種目を決めるぞー」
イェーイ!と喜ぶ声やえぇーっと落胆の声が聞こえる。
私はどちらかと言うと沈んだ気持ちだ。何故なら運動は得意ではないからで…。
「委員会で協議した結果、今年は立候補形式では無く、全校生徒あみだくじで参加する競技を決めることになりましたー!なのでみなさん恨みっこなしですよー!」
学級委員であり体育委員会でもある百合が可愛い笑顔でそう言うと男子は、はーい!と良い返事をし、女子のほとんどは机に項垂れていた。
「今年の競技種目はこんな感じでーす!」と大きな紙に種目が書かれ、名前を記入出来るように名目の横に空欄がある。
みんな席から立ち、毎年変わるらしい競技種目を見ていた。