キミが教えてくれたこと(改)
練習と称して種目別に整列し、決められた順番に並んでいき私はアンカーなので一番後ろに体育座りをしていた。
「練習ですが、まずチームの実力を知ってみなさんでフォロー出来るように考えていきましょう!」
よーい、どん!っと百合は旗を上げる。
初めに走ったのはクラスの男の子で運動部員らしく走りはとても速い。
二番目は女の子で早くはないが、三番目が男の子なのでまだなんとかタイムを縮めることができる。
そして四番目、アンカーは私。
「林さん!」
クラスメイトがバトンを持つ手を私に向かって伸ばし、それを掴んで勢いよく前を向き私は颯爽と走った。
「ん?」
「え?」
「あ?」
クラス全員の疑問符の付いた声が聞こえてくる。
わかってる、わかってる!!
私の走りが変だって事くらい!!
そう、私は笑われるのを通り越して心配されるくらい走る姿が他の人より変わっていると…。
昔、ビデオカメラに映った自分の走りに衝撃を受けたくらい。
よく言えば競歩、悪く言えばまるでトイレを我慢してる小学生みたいだった。
「はぁっはぁっはぁっ…ど、どうだった!?」
「茉莉花ちゃん…えっと、結構重症みたい」
「だから言ったじゃない!」
目を潤ませながら百合の体操着を掴んだ。
「おーい、誰だ林さんの靴に重り入れたやつー」
「こら!からかわないの!大丈夫だよ、林さん!男子がなんとか引き離してアンカーに負担かけないようにするから!」
「おい、お前も遅いだろ。まぁでも俺とこいつでなんとかするから、任せてよ」
「俺ら頑張るからさ!」
チームメイトがそう声をかけてくれた。
今まで話したことのない人達が次々と不安を消そうとしてくれる。
私は呆然としながら頷いた。
「茉莉花ちゃん、みんな茉莉花ちゃんと仲良くなりたいんだよ」
百合は私に耳打ちしてそう言った。
チームメイトが自分の為に作戦を考えてくれている。
クラスメイトが励ましてくれる。
今までみんなと距離を置いていたからどうすればいいかわからなかった。
ただ、嬉しいと思う気持ちだけは本物だった。