キミが教えてくれたこと(改)
授業が全て終わり、正門を出ると晴人が壁にもたれながら立っており私を見つけるとニコッと笑った。
「駅まで一緒に歩こうぜ」
当たり前のようにそう言われ私は少し照れながら頷いた。
「しっかし、茉莉花の走りは幼稚園児並だなー!」
駅までの道、晴人は白い歯を出しながら意地悪にそう言う。
私は「…うん」としか返事をしなかった。
「どうした?腹でも痛いか?」
晴人は私の前に立ち視線を合わせた。
「今まで、誰かと仲良くなるなんてことなかったし連絡事項以外クラスの子と話すことなんて無かった」
いつの間にかクラス内ではグループができ、私はなかなか輪に入れず教室では一人だった。
「でも、みんな今日みたいに話してくれたりフォローしてくれたり…。私のこと考えてくれてた」
「…それは茉莉花が変わったからだろ?」
え?と足元を見ていた目を晴人に向ける。
「どんな人でも最初の一歩ってすげぇ怖いじゃん。自分のことどう思ってんのか、とかこんな風に思われたらどうしようとか」
晴人は縁石の上に登りバランスを取りながら歩く。
「でもその相手が受け止めてくれそうだったら、その一歩ってわりと簡単に進めるんだよな」
「…どういうこと?」
晴人はくるっとこちらは振り向き私の前に立って顔を近づけた。
「最初会った時、何もかもつまんなさそうですましてたけど今はちゃんと感情が表に出るし新しい友達も出来た。茉莉花が知らないところでそんな茉莉花を見てる奴らがいるんだよ」
真正面でニコッと笑ってそう言う晴人に顔が赤くなる。
「ゆりりんと仲良くなったことで茉莉花の自然な姿を見てみんな茉莉花の見方が変わって…仲良くなりたい話してみたいって思ったんだよ」
よかったじゃん、と自分の事のようにニコニコしている。
「そんなの…晴人が、」
「ん?」
聞こえなかったのか言いかけたことを聞き返されたが、恥ずかしくてそれ以上言えなかった。
晴人がいてくれたから。
晴人が自分を理解しようとしてくれたから。
だから安心して素直な自分で居られるようになった。
思ったことを言えるようになって、友達が出来た。
晴人がいつも支えてくれているから。
そう言いたいのに言葉が出ない。
「……ゆ」
「ゆ???」
「ゆりりんって勝手に呼ばないでよね!!!」
「はー!?なんだいきなり…?」
もっと素直になれたら…と思いながらも私は早足で駅まで向かい、晴人は「ちょっと待てよー!」と慌てた様子で私を追いかけていた。