キミが教えてくれたこと(改)


近頃の教室では体育祭の話題で持ちきりだ。

「茉莉花ちゃん、体育祭はどんな服着たい!?」

「服?体操服じゃないの?」

「うちの体育祭はね、毎年クラス別で仮装してるんだよ!私、お裁縫得意だから毎年作らせてもらってるの!」


「へー、百合コスプレの服とか作るの得意だもんね」


茉莉花ちゃん!しー!と人差し指を口元に持って来て注意されてしまった。



「今年の仮装の話し?」

「百合ちゃん去年の服もすっごく可愛く作ってくれたもんねー!」


私と百合が体育祭について話しているとクラスの女の子が二人話しかけて来た。


「今年も頑張るよー!!」

「じゃあさ!女子達に声掛けて衣装作り手伝おうよ!」

「いいね!林さんもどう?」

「あ、えっと、私は…」


突然話しかけられ、思うように声が出ず反応に遅れてしまった。



「…そっか、また気が向いたら言ってね」


ああ、まただ
また距離を置かれてしまうかも。


「………」


違う。自分が相手と距離を置いてしまってたんだ

その時、晴人の言葉を思い出す。


ーー"どんな人でも最初の一歩ってすげぇ怖いじゃん

ーー相手が受け止めてくれそうだったら、その一歩ってわりと簡単に進めるんだよな"




「私…も、」


百合と女の子達がこちらに目線を向ける。


「私も、みんなと一緒に衣装作りしたい、いいかな?」


私の言葉に三人は目を合わせてそのあとニコッと笑った。


「当たり前じゃーん!」

「じゃあ私、さっそく女子に聞いてみるね!」

「茉莉花ちゃん、一緒に素敵な衣装作ろうね!」


そこにいたみんなが嬉しそうに受け入れてくれた。



ーーだから言っただろ?

脳裏で晴人がそう言いながら笑っている顔が浮かんだ。


新しいことに飛び込むことはこんなにも勇気がいることなんだ…。


クラスがまた体育祭の話題で盛り上がるのを見て私は微笑んだ。


< 30 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop