キミが教えてくれたこと(改)
次の日から体育祭の準備が早く終われる日は晴人に付き添ってもらい、駅近くの公園のグラウンドでリレーの練習をするようになった。
「まず走ってみるからどこがおかしいか教えて!」
晴人にそう言うと片足を前に出し、走る準備をする。
「行くぞー!よーい…スタート!」
晴人の掛け声と共に全速力でスタートを切った。
が、腕は大きく振っているもののタイムがなかなか縮まらない。
「はいはいはいはい、ストップ!」
私は振り返って、なんで?という顔をした。
「今の走りをビデオで撮って見せたいくらいだわ!まず走り方がおかしい!」
「…おかしいって…。もっとオブラートに包んでくれない?」
「腕の振りの割に足の回転が遅いから、ただの競歩になってる。まずは脚をしっかり使おう」
私の言葉を無視して晴人の指導が始まった。
「はい、ではまずここで足踏みをしてみましょう」
「足踏み?走らないの?」
いいから、と言う晴人に疑問を持ちつつも言われたままに足踏みをする。
「じゃあそこで俺の手のたたく音に合わせて脚を上げてみましょう」
そう言ってパン、パンと一秒間に一回ペースで手拍子する。
何度か続けていくと少しずつ手拍子が早くなり、最後には拍手の音と同じような速さで脚を上げることになったがなかなか音とリズムが合わない。
息が段々と上がり、もう駄目!とギブアップしてしまった。
「んー、そうだな。茉莉花は足の裏全体を地面につけて走ってるから動きが遅いんだな」
一人ブツブツと分析しているが、晴人を気にする余裕もなくぜぇぜぇと膝に手をついて息を整えていた。
「よし、茉莉花。次、つま先で地面を蹴るイメージでもう一回」
まだ息も整っていない間に次のステップを言い渡され、スパルタだ…と思いつつも自分のわがままに付き合ってもらっているので何も言わず次はつま先で足踏みをする。
あれ?と先程と違う感覚に陥る。
先程まで手を叩く音になかなか合わせられなかったが、今はなんとか合わせられるようになった。
「すごい!!さっきより出来てる!」
ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶ。
「後は足音を立てないように意識してやってみるといいかもな。とりあえず今日はつま先で足踏みを50回3セット!」
お、鬼だ…と半泣きになりながらも晴人コーチの指導を素直に受け入れ、本日のノルマ達成のため地面を蹴った。