キミが教えてくれたこと(改)
「写真撮ろー!」
体育祭が始まり、種目に参加する人もいれば出番までの間を自由に過ごす生徒もいた。
私のクラスは比較的みんな仲が良く、女子は衣装のアレンジを褒めあったり男子のコーディネートにいろんなものを付け加えて楽しんでいた。
「茉莉花ちゃん!写真撮ろう!」
そう言って肩を組んできたのはいつもより派手に着飾っている百合だった。
白いTシャツの右側の裾を結んであり、引き締まったウエストがチラリと見える。
ピンクのパニエに合わせた靴下と、ふわふわのロングヘアーの上には花冠を付けていてまるでお姫様みたい。
先程から男子がチラチラ見ているのが手に取るようにわかった。
百合は私に頬を寄せ、スマートフォンの内カメラで何枚か写真を撮る。
「わーい!ありがとう!大切にするね!」
ニコニコ笑って撮った写真をスライドして見ていた百合は、そうだ!と何か思い出しポケットをゴソゴソと漁り始めた。
「茉莉花ちゃん、腕出して!」
言われるがままに左腕を出すとパールのブレスレットに淡いピンクの花とレース地のリボンが付いたリストブーケを付けられた。
「え?これ…」
「グラジオラスっていうお花だよ。花言葉は”勝利”」
ま、造花だけどね、と照れたように笑う。
「お守りにして?絶対勝とう!」
付けられたリストブーケを抱きしめありがとう、と言った。
午前はピンポン球リレーや騎馬戦、障害物競争などでみんなかなり盛り上がった。
借り物競争では「好きなもの」を引いた3年生の男子が同じクラスの女の子を連れてゴールし、告白するという演出まで…。
そして一番盛り上がったのは女装リレーだった。
リレー参加の麻生君は体操服だったにも関わらずクラスの女子におもちゃにされ、スカートを履かされたりメイクを施されたり、かつらを被せられたりとされたい放題。
リレーついでに誰が一番美人だったかと投票があり、それもクラス得点に加算されるらしい。
「やだよー!俺こんな格好で走りたくないよー!!」
「うるさいわね!早くスタート地点まで行きなさいよ!」
「私たちの努力を無駄にする気!?」
女装リレーに参加する麻生君はショッキングピンクのミニパニエとおへそが見える短めのTシャツ、頭はカツラでポニーテールされており首や腕、頭にもジャラジャラと装飾品が施されている。
「親が泣くよー!!」
「ちょっと目擦らないで!メイク落ちるでしょ!」
女子にいいように遊ばれ彼は泣く泣くスタート地点までトボトボと歩く。
「あれって麻生?」
「そう。可愛い顔してるから女子に見えないこともないよね」
少し離れて見ていた私に晴人が小声で話しかけて来たためそう答えると何故かガッツポーズをしてどこかへ行ってしまった。
パンッという音と共に麻生君は走り出す。
先程までのショボンとした顔ではなく、真剣に前を向いて地面を強く蹴った。
「わ!早い!」
ゴールまで一直線に走り、他の生徒からかなり差をつけ余裕で一位を取った。
「やったー!!!」
「すごーい!ぶっちぎり!」
クラスのみんなが駆け寄って彼のスカートを悪戯に捲る。
「や、やめろって!!!」
楽しそうにしているクラスメイトを見て私も笑顔になった。