キミが教えてくれたこと(改)
私達のクラスは学年で6組中3位だった。
昼から得点争いになる競技が多いのでみんな気合いを保ちつつお昼休憩となる。
教室に向かおうと準備をしていると「茉莉花」と声を掛けられ、振り返ると仕事に行ってるはずだった両親がいた。
「え、お父さんお母さん、どうして…仕事じゃないの?」
両親は共働きでいつも大きな行事は小さな頃から見に来る事が少なかった。
「驚かせてごめんよ、茉莉花が楽しそうに準備してた体育祭だから少し抜けて見てたんだ」
「これ、よかったらお昼に食べて」
手渡された紙袋には私の大好物が入っていた。
「わ!カスタードプリンだ!」
「お友達と食べてね。いつも寂しい思いをさせてごめんね」
忙しい仕事の休憩時間を割いてわざわざ来てくれた二人に涙が出そうになった。
「…ありがとう」
お母さんから託された紙袋をぎゅっと抱きしめる。
「茉莉花ちゃん!」
手を振って近付いて来た百合は私の近くに人がいると気付かず、右手を口元に当てていた。
「茉莉花のお友達か?」
「あ。うん」
今まで上辺だけの付き合いしかしてこなかった私は両親に友達を紹介したことがなく、お父さんにそう聞かれて少し照れくさかった。
私の両親だよ、と百合に伝えると百合は付けていた花冠をとり深々とお辞儀をした。
「初めまして。茉莉花さんと仲良くさせて頂いております、川瀬百合と申します。未熟者の私ですが、茉莉花さんと温かい友情関係を築いていきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いいたします。」
「ちょ、ちょっと百合!なんか彼氏が親に結婚の挨拶しに来たみたいになってるから!」
「ふつつかな娘ですが、どうぞよろしくお願いいたします。」
「いや、お父さんも乗らなくていいから!」
お父さんも百合につられ頭を下げ、隣でお母さんがくすくすと笑っていた。
程なくして二人は笑顔で手を振り学校を後にした。
「ごめんね、お邪魔しちゃった…」
「ううん、そんなことないよ!…百合、プリン好き?」
先程手渡された紙袋を広げて中身を見せると百合は目を輝かせた
「美味しそう!!!」
「一人じゃ食べきれないし、一緒に食べよう。他の子にも声掛けてみよっか」
私と百合は教室に向かい、何人かに声をかけてプリンを食べた。
私の周りにはたくさんの人が集まる。
こんなにたくさんの人と笑い合ったのは本当に初めてで、心から楽しいと思えた。