キミが教えてくれたこと(改)
午後の部が始まり、みんなそれぞれの種目に励んだ。
二人三脚や綱引き、玉入れなど力を合わせて得点を稼ぐ競技が多くなる。
晴人は今年、団体競技に出ることが多いようで大勢の輪に入っていることが多かった。
「そういや、私の話しばっかりして晴人の出場種目聞いてなかったな…」
「いえーい!追いついて来たぜー!」
そんな中、私のクラスは3位から2位まで持ち上がり1位との差は僅か5点となった。
「…とうとう、だね」
そう、この体育祭最後の競技、クラス対抗リレーが始まる。
このリレーで今年の勝敗が決まる。
私のクラスが1位を取れば10点獲得で学年1位となるが…
プレッシャーで押しつぶされそうだった。
「大丈夫、あれだけ練習したんだ。肩の力抜いて、練習の時と同じ様に走ればいいだけだから」
気合いを入れようと水道場で顔を洗っていると晴人が優しく声をかけてくれた。
顔を強張らせて頷く。
「俺が傍にいてやるから、な?」
横から覗く様に言われ驚き顔を赤める。
「クラス対抗リレー参加の人こちらにー!」
誘導の声が聞こえ晴人に背中を押され、名残惜しいがそのまま列へ並び軽快な音楽とともにトラックの内側まで歩いていく。
第一走者のクラスメイトがスタート地点に立った。
「よーい…!」
その声の後に響き渡るような音でパンッと運動場にスタートの合図が鳴る。
勢いよくダッシュしトラックの周りを走るクラスメイトは、スタートは良かったものの相手が悪かったのか3人ほどに抜かされてしまった。
「っわりぃ!!」
なんとかバトンを繋いだ時には一人追い抜いたがそれでも前に二人走っている。
二番目はクラスの女の子。
他の走者に男の子もいるが、女子も何人かいてそのままの順位をなんとかキープして走っていた。
苦しさが物語る表情で三番目のクラスメイトにバトンを渡す。
「っ…お願い!!」
「任せろ!」
しっかりとバトンを受け取り前を向いて走り出した。
次は女子の走者が多かったため、前の二人を追い越しさらに二番目の走者との距離を引き離した。
私のクラスは一層盛り上がり、声援がトラックの内側まで聞こえる。
アンカーの私はスタート地点に行き深呼吸した。
「…大丈夫。絶対大丈夫」
心を落ち着かせて振り向くとクラスメイトがこちらに向かって走っている。
「林さーーん!!」
前に出されたバトンをしっかりキャッチし走り出した。
「え、林さん足速くなってない?」
「すごい!なんでなんで!?」
「みんなに内緒でこっそり一人で練習してたんだよ」
「え!そうなの!?」
「林さん…」
「すげぇ努力してくれたんだ…」
「?今誰が言った?」
やばいっ、息がっ…苦しい…
だけど後半分!もう少し!!
バトンを持つ手に汗が滲み今にも滑り落ちそうだった。
「林さーーーん!頑張れーー!」
「そのままぶっちぎりだーー!!」
「頑張れーーー!!!」
どこかでみんなの声がする。
ゴールに向かう途中、規制線ギリギリで応援してくれているクラスメイト達が見えた。
ゴールテープが見える!あと少しだ!
みんなの歓声も聞こえる!
やった!あと少しで…っ!!
「…っ!」
が、その瞬間足元が絡み前に倒れる。
「茉莉花!!」
晴人の声が遠くで聞こえた。
その瞬間、私は砂の擦れる音と一緒に地面に倒れてしまった。