キミが教えてくれたこと(改)


お昼休みが終わった後は担任の先生の授業だった。

子守唄のような先生の読み聞かせの物語を聞きながら、私も眠気と戦いながら授業を受ける。

先生がゆっくりと教室を巡回しながら教科書を読み、机に伏せている生徒の肩を叩きビクついた生徒達は一人ずつ夢から覚めていく。


「な、林!」

小声で話しかけてくるのは言わずもがな天野君だ。


「消しゴム貸して!無くしたっぽい!」

先生の方をチラチラ見ながら気付かれないように両掌を合わせ懇願してくる。


私は筆箱から消しゴムと定規を取り出し、定規をノコギリのように使い消しゴムを削る。


天野君はキョトンとした顔で私の行動を静かに見ていた。

削れた消しゴムを持ち、さっと天野君の机に置く。
天野君は私の行動一つ一つを目で追ってから最後にジッと私を見ていたのが横目で見えた。
だけど私は目を合わせず何事も無かったかのように授業を受ける。


はぁ…と天野君からため息が聞こえた。


呆れてしまったのだろうか。私はそのため息を聞いて嫌な汗が背中を伝ったような感覚がした。


先生が教科書を読みながらこちらへ回ってくるのが見えた。

私と天野君の間をゆっくり歩いて二人の距離が遮断され、数秒置いて少し天野君が見えた時だった。


机の上に白い物体が飛んで来た。
虫かと思い勢いよく仰け反ったが、よく見れば先程私が削った小さな消しゴムだった。

飛んで来たのは右側から…ふとそちら側を見ると…


「!!」

天野君が髪をかきあげ、カッターシャツのボタンを少し外しこちらを見ている。

ガサゴソとルーズリーフを持ち、そこには吹き出しで「俺の方がイケメンだろ?」と書いてあり、担任と自分を交互に指さし何故かセクシーポーズ。


……何しとんねん!!



突っ込みたい気持ちは山々だが静かな教室で声が出せるはずもなく、いつまでも続く天野君の顔芸にじわじわと口角が上がってくる。


「…ふっ、ふふっ」


はっ!と思わず堪え切れない笑いが出てしまった口を押さえたが時すでに遅し…


静かな教室に私の小さな笑いが響き、先生ももちろんクラスメイトもこちらを見ている。


「林?何か面白いことでもあったか?」


「…いえ。」


先生は一瞬不思議そうな顔をしたが、「授業中は集中するように」とだけ言い、また教科書を読み進めた。


隣の天野君を見ると何事も無かったかのように涼しい顔で授業を受けている。


…コイツめっ!!



怒りや羞恥で顔が赤くなるのを感じながら、私はノートに文字を書き殴った。





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