キミが教えてくれたこと(改)
「よーし、ホームルーム始めるぞー」
朝、担任の先生が教室に入ってくると学級委員の百合が号令をかけ挨拶をする。
「えー、今日の朝のホームルームは…なんと!席替えです!」
「え…?」
席替え?
クラスのみんなが楽しそうに盛り上がっている中、私は頭が真っ白になってしまった。
「体育祭も終わってみんなの親睦が深まった所だからこの機会にいろんな仲間と仲良くなろう!ということで、くじ引き作って来たからみんな集まれー!」
教卓に大きめの袋が置かれ、その中には紙切れが入っていた。
恐らくその紙切れに座席の番号が書かれているのだろう。
そんなことより、今でこそ側にいてもまともに話せないのに席が離れてしまうと晴人ともっと一緒に過ごせなくなるかも…
「茉莉花ちゃん!なにしてるの?ほら、行こ!」
呆然としている私の側に百合が笑顔で話しかけ、私は手を引かれるまま教卓の前にいく。
教卓へ向かう途中、晴人を見ると晴人は動く気配を見せず気怠そうにしている姿が見えた。
「茉莉花ちゃん引いた?」
「…うん」
引いた紙の番号を見て百合が嬉しそうに笑顔になる。
「やった!茉莉花ちゃんの後ろの席だー!」
私の席は右端の前から3番目の席だった。
後ろは百合で、嬉しそうにしてくれる彼女に微笑んだ。
だんだんと黒板に書かれた座席表に名前が埋まっていく。
晴人は…
いつも目で追うのは晴人ばっかりだ。
晴人の席は変わらず今のままだった。
「はーい、じゃあみんな席移動してー」
椅子を机に乗せ、ぶつからないようにみんな各自指定された席へ向かう。
「…せっかくの席替えなのに晴人の席は変わらないんだね!」
教室中に机や椅子を引く音が響き、私の声が晴人に届いているか不安になった。
「…な。」
「………」
返って来たのはその一言だけだった。
なんだか虚しさを感じ私はそれ以上何も言えず新しい場所へ向かった。
もう少し話してくれてもいいじゃん…。
唇を尖らせ、そう思っているのは私だけなんだと思い知ると悲しくて寂しくて鼻の奥がツンとした。