キミが教えてくれたこと(改)


《来週中頃にかけて梅雨前線が本州の南に停滞するため、梅雨入りしている西日本や東日本では晴れる日もある予想です。》


「いってきます!!」


朝の天気予報を見て私はすぐに家を飛び出した。

道路には大きな水溜り、電線には雨のあとを物語るように水滴が地面に向かって落ちている。

少し蒸し暑さを感じるけど、今日はずっと続いていた雨が珍しく止み太陽が顔をのぞかせてくれた日だった。


「晴人、まだ学校来てないかな…」


電車を乗り継ぎ、駅へ着くと数名の生徒が私と同じ方向を歩き学校へ向かっている。

ゆっくり周りを見渡しながら歩く。


「おはよっ!」

その言葉に声のする方へ勢いよく顔を向けた。


「おはよー!久々に晴れたねー」

「ほんとだよねー」

期待したのも束の間、晴人ではなく他の学年の生徒だった。


「はぁ…」


タイミング悪かったかな…。

そのまま重い足取りで学校へ向かう。

着いた下駄箱でも晴人を探すがどこにも見当たらなかった。

もしかしたら…とあの使われていない校舎裏へと足を進めようとした時、校内放送のチャイムが鳴る。


《本日、全校朝礼の為全学年のみなさん講堂へ集まって下さい。》


私は進めていた足を止め、溜息をつきながら教室へ向かった。


「茉莉花ちゃん!おはよ!」

教室に入るとちょうど講堂へ向かう百合と鉢合わせた。


「おはよ!」


「ナイスタイミング!一緒に講堂行こ!」

百合の申し出に一つ返事で答え自分の机に向かい鞄をかける。


晴人の席を見るがまだ本人は不在。


「おはよっ」

声をかけられすぐさま振り向いた。


「おお、ビックリした。ごめん、驚かせたかな?」


そこには麻生君がいて勢いよく振り向いた私に動揺していた。


「あ、ご、ごめん、大丈夫。おはよう」

麻生君は、それならいいけど、と優しく微笑んだ。


「全校朝礼だってね。こんな蒸し暑い中。林さん、倒れないようにしっかり水分補給して来るんだよ」

それじゃあ、と麻生君は友達の輪へ入っていった。

彼は晴人とはまた違う優しさを見せるんだよな…。


「茉莉花ちゃん!行くよー!」


「あ、うん!」



私は急いで百合の元へ走った。






< 49 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop