キミが教えてくれたこと(改)


休み時間のチャイムが鳴る度、私は晴人の姿を目で追った。

晴人は休み時間毎に大勢の人の中にいてなかなか校舎裏に行く様子がない。

晴人は私と一緒にいるの…嫌なのかな…。

それとも、もう私の事なんてどうでもよくなっちゃった?

不安が不安を呼び、だんだんと気持ちが沈んでしまう。


そしてとうとうお昼休みを知らせるチャイムが鳴った。


「茉莉花ちゃん!ご飯食べよ!」

「うん!」

自分の机を後の席の百合の机とくっつけるために机を持ち上げ後ろを振り向いた時だった。

ちょうど晴人が席を立ち一人で教室を出ようとする姿を目の当たりにした。


「ゆ、百合!ごめん!!」

「え?」

「私、お昼休みに先生に呼ばれてたの思い出した!ごめん!この埋め合わせはまたするから!」

「え、うん!気をつけてね!」


急いでその場を離れようとする私に嫌な顔一つせず笑顔で送り出してくれた百合に心の中で何度も謝罪し、私は校舎裏へと向かう。

ついさっき教室を出たばかりだったのに晴人はどこにも見当たらない。

もしかしたら友達の所に行ったのかも…。

お昼休みで賑わう廊下をすり抜けて私は静かな校舎裏へと足を踏み入れた。

一度深呼吸をし息を整え、ゆっくりと足を進める。


「……。」


いない。


またすれ違いだ。


せっかく、会えると思ったのに。

自然と溜息が出て肩を落とした。






「そんなに俺に会いたかったの?」


勢いよく振り向くとそこには意地悪に笑う晴人がいた。


「はる…と、」

「息切らす程、俺に会いたかったんだ?」


晴人は確かめる様にまた同じ質問を私に投げかける。

いつもなら、そんな事ない!って言うのに。言えるのに。なのに、なんでだろ。

太陽の光が緑の葉っぱの上にある水滴に反射してキラキラして、私の返答を待つ晴人の優しい笑顔がより一層輝いて見える。


だからかな、


「会いたかったよ。ずっと」


いつもより素直にそんな言葉が出たのは。

一瞬驚いた顔をした晴人がそのまま私の横を通り過ぎて壁にもたれて座った。


「ほら、おいで茉莉花」

私を呼ぶ晴人の声が愛しくて、私は言われるがまま晴人の側に寄り隣にしゃがみ込んだ。




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