キミが教えてくれたこと(改)
「元気?」
「げ、元気だよ」
膝に肘を置き、頬杖をついてこちらを見る晴人に思わず胸がどきりとした。
「最近楽しそうじゃん。道下と山内ともすげぇ仲良いし」
「!うん!そうなの!二人ともすごく優しくて面白いの!」
嬉しさのあまり思わず晴人へ顔を向けると目を細め優しい笑顔をしていた。
「は、晴人は、最近どうなの?」
「俺?俺は別にいつも楽しいけど」
「嘘だ。」
晴人の答えに間髪いれずにそう言うと晴人は大きな目をこれでもかと言うほど見開いた。
「なんでだよ」
「だって最近おかしいもん!私と距離置いてるっていうか…なんか冷たい時もあるし。」
「…そんな事ねぇよ」
「そんな事ある!今だって目合わせてくれないじゃん!」
バツが悪そうにそっぽを向く晴人の袖を掴みながら言うと晴人はゆっくりこっちを見た。
光で少し茶色がかって見える瞳に私が映る。
「…寂しかった?」
「え?」
「俺が冷たくて寂しかった?」
…今日の晴人は変だ。
さっきから私の気持ちを確かめるように私に問いかけて言葉にさせようとする。
まるでそう言って欲しいと望んでるように。
「なんか、今日の晴人一段と意地悪だよ…」
「どこが?聞いてるだけじゃん。で、どうなの?寂しかったの?」
すがるように問いかける晴人になんだか胸がきゅっとする。
「…寂しかった、よ。すごく」
今でも思い出すと鼻の奥がツンとなる。
「…そっか」
晴人は何故か満足気に笑っている。
「あ、そういえば…」
「ん?」
「私、男の子と喋れるようにもなったよ!ほら、体育祭の時女装リレーに出てた麻生君!道下さんと幼馴染なんだって!」
「………ふーん」
喜んでくれると思ったのに、先程の笑顔は何処へやらいきなり晴人の機嫌が急降下した。
「え?なに?」
「そりゃあ良かったな、優しい男が出来て」
「優しい男って…麻生君とはそんなんじゃ…ってどこ行くの?」
晴人はおもむろに立ち上がる。
「どこだっていいだろ、茉莉花に関係ねぇよ」
「な!関係ないって何よ!言いたい事があるならハッキリ言ってよ!」
その場を離れようと背を向けた晴人に向かって叫ぶと今まで見たことない冷たい目で振り向いた。
晴人の威圧にぐっと体に力が入る。
「マジでわかんねぇの?」
「な、なにが?」
私の問いに大きなため息が聞こえた。
「茉莉花がこんな馬鹿だって思わなかった」
「!馬鹿ってなによ!一緒に喜んでくれると思って…!」
「っ喜ぶわけねぇだろ!」
「なによ!私に友達が出来るのがそんなに気に入らないわけ!?」
ふー、ふー、と二人とも息を切らしながら睨み合う。
「…気に入らねぇよ」
晴人の小さな声に眉をしかめる。
「…他の男と仲良くしてんのなんて気に入らねぇよ、悪いか。」
晴人は吐き捨てるように言うとそのまま一度も振り返らずにどこかへ向かってしまった。
私はそのまま呆然と立ちすくむ。
え、なにそれ?今のって…ヤキモチ?
「ま、まさかね。そんなはず…」
誰もいない校舎裏で私は一人赤面しながら自問自答を繰り返していた。