キミが教えてくれたこと(改)
「みなさーん!今日は快晴!ずっと雨が続いて気持ちがブルーだった皆様に、本日は近くの公園で自由に風景画を描いて頂きまーす!」
美術の授業。担当の先生が楽しそうにそう言うとみんなも笑顔で手を挙げた。
絵の具やパレット、必要な画材を持ちみんなで並んで学校近くの公園を目指す。
「天気良くてよかったね」
「うん」
隣に並んでいた麻生君に笑顔で答えるとそのすぐ後ろを晴人が列から離れ、先に公園に向かって歩いて行った。
もう、また先生の言う事聞かないで好き勝手してっ!
「?林さん、何かあった?」
「あ、ううん、なんでもない!」
私の視線を辿った麻生君は不思議そうな顔をして、そう。とそのまま前を向いて歩いた。
「さーみなさん着きましたよ!それでは自由に風景画を描いてくださいね!公園の外には行ってはいけませんよ!」
先生の合図でみんな思い思いの場所に行き絵の具を出して行く。
見渡すと公園はとても大きく、芝生にシートをひいてお弁当を食べている家族や噴水の近くで遊ぶ子供、綺麗な紫陽花を見ている老夫婦がいた。
「綺麗な場所だな…」
自然の空気を胸いっぱいに吸って吐き出した。
「あ、ちょっと待って茉莉花ちゃん!そのままで!」
「え?」
振り返ると百合がすでにパレットに絵の具を出し絵を描いていた。
「百合、風景画って先生言ってたよ?」
「まずは腕慣らしから!出来た!」
「早っ!そしてうまっ!!」
まるで牛丼屋のキャッチフレーズの様な言葉が出るほど、百合はやはり美的センスに恵まれているのか綺麗な風景と何故か私を描き上げていた。
「先生に見せてくるね!」
画材道具を置いたまま、百合は走り出し先生の元へ向かった。
そんな百合に苦笑いをしつつ、私もまずは題材を決めるべく公園を歩いた。
さらさらと風が吹き、木の葉っぱが揺れる。
空は雲一つない綺麗な青空。
少し歩くと色とりどりの紫陽花が咲いていた。
ピンク、紫、青、白、その花びらに数日前の雨を物語るように水滴が落ちている。
いつかの校舎裏を思い出す。
ーー気に入らねぇよ
晴人…。
膝に手を置いて紫陽花を見ていた私は膝から手を離し背を伸ばす。
「あ…」
紫陽花がいっぱいで気付かなかった。
私と紫陽花の向こう側にベンチがあり、そこには組んだ手を後頭部に置き仰向けで寝転がる晴人がいた。