キミが教えてくれたこと(改)
それはまるで、泡沫のようで。
「ねぇねぇ!今度みんなでここ行こうよ!新しく出来たアイスクリーム屋さん!」
道下さんはそう言って私と百合、山内さんにスマートフォンの画面を向けながらほくほくとしていた。
「わー!可愛い!」
「美月好きそうだね」
「店内もオシャレだね!私も習い事のない日一緒に行きたい!」
画面には色とりどりにトッピングがされたアイスクリームと女の子が好きそうなパステルカラーの店内が写っていた。
「じゃあ決定!みんな大丈夫な日教えて〜!」
私の席にみんなが集まりそれぞれ手帳やスマートフォンを見ながら日程を合わせていく。
「お前、そんなんばっか食ってるから太るんだぞ」
ふいに会話に入ってきた麻生君は道下さんに向かって怪訝そうに言った。
「いいじゃん別に〜。楓太に関係ないでしょ〜!一緒に行きたいって言っても連れてってあげないんだから!」
「お前と一緒になんていかねぇよっ。林さん、こいつの腹マジで底無しだから取られないように気をつけてね」
「茉莉花ちゃん達の食べたりしません〜!もう一個買って食べるし!」
「お前は家畜になりたいのか?」
いつもの様に言い合う二人を見てみんなで楽しそうに笑う。
あれから麻生君は何事も無かったかの様に私に接してくれる。
きっと彼なりの優しさだから、私もいつも通り振舞っていた。
「ほらそこー。アイスクリームもいいけど今から抜き打ち小テストやるぞー」
「「「ええええええ!」」」
教室に入って来た担任の一言にクラス中が悲鳴をあげる。
「先生〜、一緒にアイスクリーム屋さん行ってあげるからテストしないで〜」
「先生はアイスクリームに釣られるような男ではありません。はい、机の上は筆記用具だけなー」
クラス中が笑いと悲鳴で賑わい、私もそんなやりとりが楽しくて笑う。
今までの私には想像出来なかった学校生活。
みんなの輪に入って一緒に一喜一憂出来るのがすごく嬉しい。
毎日が楽しくて、学校へ行くのがいつのまにか楽しみになっていた。
ただ一つを除いて。