キミが教えてくれたこと(改)
「ほら!見て見て!これこないだ百合達と行ったアイスクリーム屋さん!自分たちでいろんなのトッピング出来るんだよ!」
少し蒸し暑くなってきた校舎裏で、日陰に座りながら私は晴人に数日前みんなででかけた時の写真を見せた。
「トッピングするだけなのに、結構みんな個性が出てて面白かったなー」
思い出してまた自然と笑顔になる。
ふと晴人を見ると、頬杖をつき優しく微笑みながら私を見ていた。
「あ、ごめん。私ばっか喋っちゃってるね…」
「いや…そうじゃねぇよ」
晴人は梅雨明けした透き通る空を見上げた。
「茉莉花が楽しそうで嬉しいんだよ。」
空を見上げたままの晴人はそれ以上何も言わなかった。
「………。」
私達は仲が悪くなったわけではない。
でも、なんだか最近の晴人の様子がおかしいと思う。
具体的に何かと言われるとわからないけど、晴人は私の話をただ笑顔で頷いて聞くだけ。
もちろんそれが不満なわけではない。
ただ、以前より元気がないような気がする。
そう、あの日、あの雨の日に相合傘をして帰った以来ずっとそんな感じだった。
「…晴人は?最近どう?楽しい?」
「え?ああ、いつも通り楽しいよ」
やっぱり、いつもの覇気がない。
「…私って、頼りないかな?」
「え?」
抱え込んだ膝に目線を落とす。
「私、晴人にすごく感謝してる。私こんなだけど、晴人を支えたいって思ってるよ…」
こんな事言うと困らせちゃうかな。
だけど、もう見て見ぬ振りなんて出来ないよ。
「!」
言い終わると同時に私は温かい何かに包まれた。
理解するまで時間がかかり、冷静になって考えると晴人の左隣にいた私は今、晴人の胸に押し付けられように力いっぱい抱きしめられていた。
「は、ると…?どうしたの?」
突然の行動に頭の中がぐるぐる掻き乱され顔が熱くなる。
「…っだけ…」
「え?」
胸に押しつけられているため聞き取れずもう一度聞き返す。
「茉莉花は俺の側で笑っててくれたら、それでいいからっ…。だから、もう少しだけ…っ」
まるで誰かに言い聞かせるように呟く晴人は苦しそうだった。
私にすがるように抱きしめる腕の強さは痛いくらいで、だけど振りほどくことも出来ない。
少し震えている肩にそっと手を置き、何も言わずただただ晴人の気がすむまで私はそのままでいた。
いつも飄々としている晴人が初めて弱さを見せた気がした。