キミが教えてくれたこと(改)
「もうすぐ夏休みだねー!茉莉花ちゃんは予定とかあるの?」
移動教室の為、教科書を持って一緒に廊下を歩いていた百合に話しかけられぼんやりしていた思考を引き戻される。
「うーん、特には…。毎年家族と過ごすことが多いかな」
そうなんだ、と百合は言った後ゆっくり微笑んだ。
「じゃあ一緒にプール行かない?」
「プール?」
「うん!新しく出来たリゾートホテルの中のプールなんだけど、スパもついててすっごく楽しそうなの!お父さんのお仕事関係で優待券を何枚か頂いたから良かったらみんなも誘って行かないかなって」
百合の話しているリゾートホテルはこの辺りではかなり有名な会員制のホテルで、普通ではなかなか入ることの出来ないところだった。
さすがお嬢様…と言ったところ。
「…プール嫌?」
「ううん!なかなか入れないホテルって聞いたことあるから、誘ってもらえてすっごい嬉しい!すごいね!すっごく楽しみ!!」
私が胸を高鳴らせていると百合が笑顔で私の顔を見ていた。
「?どうしたの?」
「最近、茉莉花ちゃん暗い顔してる事多いから…。ちょっとでも元気になってもらえたらなって…」
百合…。気付いてて何も言わず元気づけようとしてくれてたんだ…。
「茉莉花ちゃんの優しさに救われたし、私にも何か出来ればなって…。私に出来る事があったらいつでも言ってね!」
「…うん。ありがとう」
百合の優しさに心が温かくなる。
私達は誰かに救われて、助けられて、またそれを誰かに返したくて。
そうやって「優しさ」が広がってく。
大事な人をもっと大事に出来るように。
百合が私に救われたって言ってくれてるように、その為に自分も何かしたいと思うように。
私もみんなに、晴人に何かしたい。
見返りなんていらない。
"私"がしたいんだ。
「クラスの子達みんなに聞いてみようよ!大勢の方が楽しいよね!」
「クラスの子達って…そんなに呼んで大丈夫なの?」
百合の大胆な提案に少し冷や汗が出た。
「?もしクラスの32人全員が来たとしても貸切にしてもらえば大丈夫だよ!」
「プールを貸切…。さすがお嬢様…庶民にない感覚をお持ちでいらっしゃること…。」
移動した教室に着くと晴人は頬杖をついて窓の外を眺めていた。
晴人も来てくれるかな…。
みんなと一緒だったら少しは気持ちも晴れるかな?