キミが教えてくれたこと(改)


「やっぱりここにいた!」

校舎の壁からひょっこり顔を出すと晴人が壁に背を預けて空を見上げていた。


「飯食ってたんじゃねぇの?」

「もう食べ終わった!晴人が教室出て行くの見えたから…」


そこまで言うと口を閉ざした。
晴人を追って走って来ました!って言ってるようなものだな、と気付きそれ以上何も言わなかった。


「ほら、突っ立ってねぇでこっち来いよ」

晴人はそんな私の気持ちに気付いてるだろうけど何もいわず棒立ちの私に手招きした。


「…あのね、晴人、夏休みにプール行かない?」

「プール?」

晴人の隣に座ってさっそく夏休みの話を持ちかけた。


「ほら、近くにリゾートホテルが出来たでしょ?百合のお父さんのお仕事関係でそのホテルのプールが利用出来るんだって!今みんなで話してて、クラスの子達に声掛けて夏休みみんなで行かないかって計画立ててて…」


「へぇー、すげぇな。さすがお嬢様」


「だよね!私も思った!」


二人で笑いあった後、晴人は目を伏せて襟足をかいた。


「…夏休み忙しい?」

「…んー、どうだろな。ほら、俺ハーフだから親父の国に顔出さないと行けないかもしれないし…」

「…あなたバリバリの日本人ですよね。ハーフなんて初めて聞いたんですけど」


「バレたかー」といつもの悪戯っ子の様に笑う。


「晴人にしては下手な冗談だね」

「あれ?ダメだった?最近鈍ってんのかなー」


夏休みの話はそれ以上晴人の口から出ることは無かった。
私ももう一度聞けるような状況ではなかったので何も言わなかった。


「山内さんが男子に声掛けしてくれるからまた聞かれるかもしれないけど…。気が向いたら来てね」


「わかったよ」


晴人は答えるとじっと私の手を見つめた。

「な、なに?」

「ん?手、小っせぇなって思って」

「晴人が大きいんだよ。私より身長もずっと高いし」


女子の平均身長より少し低い私よりも30cmくらい大きい晴人とでは手の大きさなんて歴然の差。


「ん、」

「え?」

「手、貸して。」

私の右隣にいる晴人は自身の左掌を広げて私が手を出すのを待っている。

「……。」

私は右手を広げて晴人の左手の横に並べる。


「小っせぇな」


その言葉のすぐ後に晴人は私の右手を攫い、指を絡ませて握った。


「え、え、な、なにっ…」


突然の出来事に理解出来ずうろたえていると晴人がふっと笑って私の右肩に頭を預けた。


「はっ、晴人…!?」


私の右肩に頭を乗せてるので表情が全く見えないけど、晴人は絡まり合った私達の手をマジマジと見つめているみたいだった。


頬にあたる晴人の髪は意外なほどふわふわだった。


一通り手を眺めた後、そのままぎゅっと握りゆっくりと私を見た。


至近距離すぎて絶対私変な顔になってる…!


「予鈴なるまでこのままな」

「えっ待って、」


一言そう言うと晴人は顔を下げそのまま何も話さなくなってしまった。


私は晴人の温かさを感じながらピクリとも動かないように息をするのも気を遣う。


私の心臓の音が晴人に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい大きな音を立てている。


驚き半分、嬉しさ半分。

晴人の突発的行動はいつも私をドキドキさせるんだから…!




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