キミが教えてくれたこと(改)
「失礼します!」
私の声で職員室の先生達が手を止めてこちらを見ている。
その中で私は担任を目掛けて足を進めた。
「お、おお、林。どうした、そんな大声出して…」
「先生!天野君ずっと学校に来てましたよね!?」
「…え?天野?」
担任は眉を顰めながら私の言葉を繰り返す。
「天野晴人です!今日休んでる!私が転校して来た時、席替えをする前に右隣にいたっ…!」
「おいおい、林とりあえず落ち着け!どうしたんだいきなり…」
担任の言葉に少し冷静さを取り戻し私は深呼吸をした。
「みんな天野君が事故に遭ってずっと学校に来てないって言ってるんです。違いますよね?天野君、昨日まで学校に来てましたよね?」
私の言葉に担任は眉間に皺を寄せたままだった。
自分の心臓の音が頭に響いてうるさい。
背中に汗が伝う。
「林、よく聞け。天野はお前が転校してくる前に事故に遭って、そこからは学校に来ていない。だから林は学校で会った事がないはずだ。誰かと勘違いしてるのか?」
頭が真っ白になる。
会った事がない?
そんなはずない。
だって晴人は私のそばにいて、いつも相談にのってくれて。
抱きしめて、手を握って…。
ふらつく体をなんとか両足で支えるのが精一杯だ。
晴人が…存在しない…?
「!そうだ!封筒!先生、晴人の教材作ってましたよね!?」
「え?ああ、これのことか?」
乱雑に置かれたプリントの山から封筒を取り出す。
そこにはやはり晴人の名前が書いてあった。
「…もし、天野が戻って来たらすぐに勉強に取りかかれるようにって…。まぁ願掛けみたいなもんだ」
そう悲しそうに笑う。
「じゃあ、本当に晴人は…」
ずっと学校に来てないの?
どうして?私と一緒にいた晴人は?
晴人は今一体…
「!」
ふと窓の外を見るとそこから旧校舎が見えた。
そしてそこへ向かう見知った後ろ姿。
間違えるはずがない。あれはっ…!
「あ、おい!林!」
私は勢いよく職員室を出て旧校舎へ向かった。