キミが教えてくれたこと(改)
「将来も大事だけど、まずはこの青春時代を満喫しなきゃ!それにはまず、恋愛という名のスパイスが必要ではなかろうか!」
「れ、恋愛!?」
道下さんはテーブルから身を乗り出し私達それぞれの顔を順番に見る。
「そう!勉強も大事だけど、誰かを大切に思ったり好きだって思えたりその相手の為に何か行動したり…。ドキドキキュンキュン、そしてたまに切なくなったり…!そういうの大事じゃない!?」
「まーた美月がわけわかんないこと言ってるよ…」
山内さんはそう言うと溜息をついてアイスコーヒーを飲んだ。
カランカランと氷が音を奏でる。
「亜里沙はだ〜いすきな彼氏がいるからいいじゃん〜!ね!そう思うよね!?二人とも!」
百合と私は目を合わせて苦笑いをする。
「私はまだ恋愛はいいかな…。みんなといる毎日が楽しいし」
「ゆりりん…。モテる女に私の叫びは届かぬか…!茉莉花ちゃん!!」
「は、はい!!」
持っていたグラスのストローに口を付けようとした瞬間、突然名前を呼ばれたため私は背筋を伸ばしてグラスをテーブルに置いた。
「茉莉花ちゃんは美月の気持ちわかるよね!?」
「う、うん!」
道下さんが私の両手を握る。
「恋愛、大事だよね!?」
「う、うん!」
「愛し、愛されそしてお互い成長する!これも1つの人との繋がりである!それを謳歌せずに、何を青春と呼ぼうか!!」
「は、はい!師匠!」
「だからこそ、今この時、自分の足で出会いを見つけに行かねばならぬ!!茉莉花殿も私に着いて来てくれるか!?」
「お、お供いたす!!」
「いや、だから武士か。美月、茉莉花ちゃんが優しいからって自分の意見を押し付けないの!」
山内さんは人差し指を振り注意すると、道下さんは「えへへ」と舌を出して笑った。
恋愛か…。
私にもいつか心から誰かを好きになることがあるのかな…。
ーー俺が傍にいてやるから、な?
「え?」
「?茉莉花ちゃん、どうかした?」
「あ、ううん!」
空耳…かな?
どこかで聞いた声が耳を掠めた気がした。
だけど周りには誰も見当たらなかったため勘違いだと思い、私はまたみんなとの会話の中に入って日が暮れるまで楽しい時間を過ごして帰路についた。