キミが教えてくれたこと(改)


新緑の葉が風に揺れる。
桜の季節が過ぎ去った今は、芽吹いた若葉が日に日に濃い緑へと変化していく。

蒸し暑さの中でもこの葉桜の下にいると風が吹いた時に少し涼しさを感じる。


青々とした空の下で、私はあの旧校舎の裏にいた。


あれからたまに誰かが私に話しかけている声が聞こえる気がする。


何かの記憶なのか、遠い昔の思い出なのか…。
ここに来ると何か思い出せそうな気がして、時間を見つけては立ち寄っていた。


「なぜかここに来ると安心するんだよな…」


そして不思議とこの場所は私の心を温かくさせた。



「きゃっ!」

「へ?」

声のする方に振り返るとお弁当箱を持った女の子が私を見て驚いていた。


「あ、すすすすすみません!誰もいないと思って…!」


しどろもどろしている彼女の上履きを見ると、そこに色付いている赤色の線は一学年下を示していた。


「では…!」

「え?ちょ、ちょっと待って!」

思わず呼び止めてしまったが次の言葉がなかなか出て来ない。

考えながらなんとなく彼女を見た。

怯えた表情、お昼休みにこんな人気のない所へ一人でお弁当を持っている姿。

ああ、そうか…。


「…ご一緒してもいいかな?」


「…へ?」

彼女の素っ頓狂な声に私はにっこりと微笑んだ。





< 74 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop