キミが教えてくれたこと(改)
「あ、そうだ!みのりちゃん、"バタフライ効果"って知ってる?」
「"バタフライ効果"…ですか?」
「うん!」と私は大きく頷いた。
「"ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる"って。まぁこれは例え話なんだけどね!」
みのりちゃんは何度も頷きながら私の話しに耳を傾けてくれている。
「小さな行動を積み重ねていけば後に大きな変化が起こったり、ほんの少しの動きや変化によって未来に大きな効果をもらたすってことなんだよ」
「な、なるほど…」
少し難しかったのか眉を寄せながら頷いてくれた。
「自分はどんな風に変わりたいか明確にしてその為にまず何が必要か考えてみる。小さなことでもいいの。それを積み重ねれば少しずつ新しい自分に近付けると思うよ」
「…小さなことでも積み重ねていく、か…。そうですね、変わるためには自分から行動しないとですね!」
少しずつ明るくなる表情に自分も嬉しくなり自然と笑顔になる。
「でも、先輩凄いです。"バタフライ効果"なんて初めて聞きました!」
「そうだよね、私も初めて知ったんだー!まぁ全部受け売りなんだけどね!」
私は「ははは…」と困ったように笑いながら耳に髪をかけた。
…あれ?でも…、この話し誰から教えてもらったんだっけ?
「?先輩?」
「え、あ、ううん!なんでもない!」
みのりちゃんの呼びかけにハッとし、私は意識を戻した。
「でもそれを先輩に教えてくださった方も素敵ですね!そんなに先輩に親身になってくれるなんて、きっとすごく優しい人なんだと思います!」
「うん…そうだね。」
私にこの事を教えてくれたのは…、私を変えてくれたのは一体誰だったっけ?
大切なことなのに、思い出せない。
だけど、みのりちゃんにそう言われると心がくすぐったくて温かい気持ちになる。
きっと心は覚えているんだ。
わたしを暗闇から救ってくれた人を。
「あ、予鈴ですね」
お昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
私とみのりちゃんは広げていたお弁当を仕舞った。
「先輩!今日はありがとうございました!少しずつ前向きに頑張ろうと思います!」
「うん!その調子だよ!頑張ってね!何かあったらいつでも言ってね!」
みのりちゃんは笑顔で一礼すると教室へと戻って行った。
ーーよくできました。
突然吹いた風がふわっと私の頭を撫でた気がした。
辺りを見渡しても私しかいない。
少し乱れた髪を直し、私もゆっくりとその場を後にした。