キミが教えてくれたこと(改)
「とうとう明後日から夏休みだね〜!プール楽しみ〜♪」
体育の授業中、バレーボールを抱きしめながら話す道下さんに「そうだね」と笑顔で返す。
男女別での体育の授業。
女子のみで4チームに分けられ2チームずつ試合をしている中、私と道下さんの2チームは他チームの試合観戦をしていた。
「あわよくば、プールでイケメンと出会うわよ!茉莉花ちん!」
意気込む道下さんに苦笑いをした。
「美月、また林さん巻き込んでんのか?」
振り返るとタオルで額の汗を拭く麻生君がいた。
私達のコートの隣では男子もまたバレーの授業を受けている。
「またって何よ!ていうか、ちゃんと授業受けなさいよね!」
「今試合終わったとこなんだよっ」
しっしっと追い返そうとする道下さんにべーっと舌を出して言った。
「私達はね、運命の出会いを見つける旅に出るのよ!」
「はぁ?」
「例え茨の道であろうとも決して諦めぬのだ!のぉ、茉莉花殿!!」
「は、はい!どこまでもお供いたす!!」
道下さんの熱意に私は思わず敬礼をしてしまった。
「なに馬鹿な事言ってんだよ。林さんも、こんな馬鹿なやつ相手にしなくていいからね?」
「楓太のくせに、美月に馬鹿って2回も言った〜!」
え〜ん、と泣きついてくる道下さんの頭をよしよしと撫でた。
「はーい!次はCチーム!コートに入って!」
先生の声でCチームの道下さんがゼッケンを付ける。
「ほいじゃ!茉莉花ちん、いってくるね!」
「いってらっしゃい!頑張ってね!」
「怪我すんなよー」
道下さんがコートに向かうのを二人で見送った。
「アイツ、何言ってんだか…」
「ふふっ、でも道下さんって面白いよね」
「面白いっていうか…。林さん、好きな人いるのにあんな事言うのもな…」
「え?」
好きな人?
「あ、もしかして美月知らないの?だったら俺から謝っとくね、美月が無神経な事言ってごめん」
「え、いや…」
「おーい、楓太!得点板係だぞー!」
「今行く!じゃあね、林さん。怪我しないようにね」
麻生君は颯爽と授業に戻ってしまった。
好きな人?私に?
そんな話し、したっけ…。
誰かと間違えてるのかな?
「林さーん!ごめーん!ボール取ってもらってもいいー?」
試合中のクラスメイトに声を掛けられ、体育館の出入り口近くにいた私は体育館の外にあるボールを見つけた。
「ちょっと待ってね!」
体育館から出るとむっと蒸し暑さを感じる。
ボールを拾い上げ、すぐに渡そうと勢いよく振り向いたその時、
「あ、れ?」
目の前がグルグル回り、目が霞んだ。
そのまま立って居られなくなり、ゆっくりと体が地面につく感覚がした。
「茉莉花ちゃん!」
「林さん!?」
クラスメイト達の声が遠くで聞こえる。
だけどそれとは反対に私の瞼は閉じていった。
遠くでみんなの心配する声を聞きながら私はそのまま意識を手放してしまった。