キミが教えてくれたこと(改)
ーー茉莉花なら絶対大丈夫
ーー俺の胸に飛び込んで来い
ーーほら、おいで茉莉花
これはいつの記憶?
私を呼んでるあの声は…ー
思い出したい。あれは、私の…ーー
「…んっ…」
「林さん!大丈夫!?」
目を開けるとだんだんと光が差し込んでくる。
焦点が定まり、頭の中がはっきりしてくると見えたのは白い天井と私を覗き込む保健室の先生だった。
「あれ…?ここは…」
「あなた体育の授業中に倒れたのよ!全然呼びかけても起きないし、救急車を呼んで病院に運んでもらったのっ」
よかった…、と先生は安堵の表情をしていた。
「気分はどう?先日も旧校舎裏で倒れたでしょ?念のため調べてもらったけど特に問題は無いみたいだけど…」
先生に背中を支えてもらいながらゆっくりと起き上がる。
「はい、ちょっとまだぼーっとしますけど、大丈夫です」
私が答えると同時に白衣を着た男性と看護師さんが病室に入って来た。
「林茉莉花さん、気分はどうですか?」
「特に問題は…」
「失礼…」と下瞼を軽く引っ張られその後聴診器を当てられる。
「…うん。今のところ問題無さそうだね。問題無ければこのまま帰っても大丈夫だよ」
ありがとうございます、と乱れた髪を直した。
保健室の先生は看護師さんと一言二言話し、わたしの元へ戻って来た。
「お母様と連絡が取れて今こちらに向かっているそうよ。私は先にお会計済ませてくるから、あなたはゆっくり下まで降りて来なさい。一人で来るのが難しければまたここに戻ってくるから待っててちょうだいね」
私は頷いて病室を出て行く先生を見送った。
私、また倒れたんだ…。
お母さん仕事中だったのに迷惑かけちゃったな…。
空が夕焼けに染まりつつあるのを見て随分と長い時間眠っていることに気付く。
そのまま跳ねた後ろ髪を何度か手櫛で通し、ベッドから降りると履きっぱなしだったであろう体育館シューズに足を入れ病室のドアを開いた。